2008年9月23日火曜日

豪雨の中部ツーリング その1

 2008年9月20日、神奈川県に台風13号が訪れた。朝3時に出発しようとしていた私は、台風に立ち向かう事を覚悟していたのだが、結局目覚めたのは5時。家を出たのは5時半で、既に雨すら降っていない。この日この時の為に雨具をフル装備揃えたので、残念なような嬉しいような。
  山中湖へ抜けるのに三国峠を通ると、小山町だか御殿場市だかが一望出来た。霧に覆われるイメージしかない三国峠だが、台風後なだけにかなりクリアだ。山中湖側も同様に、雲がかかっているクセに景観はハッキリしていて、これまた別物に感じる。正直なところ、これで帰っても良い気分だった。
 そうも言ってられないので、御坂峠を越えて一宮御坂ICから中央自動車道へと乗った。境川PAで一服した後、8時10分、双葉SAに到着。朝食を食べていなかったので、五平餅を一本食べた。八ヶ岳PAでも一服をし、9時54分、諏訪高島城に到着。チキンな私の限界速度が80km/hなだけに、高速道路では周りの車に気を使って疲れた。
  諏訪高島城は小じんまりとしていた。しかしながら、お堀があって庭園も綺麗なので、城としての魅力を凝縮した感じだ。ただ、この城をメインに旅行したらガックリするだろう。
  それをフォローするかの如く美しい諏訪湖。晴れたり曇ったりの天気だったが、諏訪湖は晴れていて幸いだった。その後は諏訪大社・・・と行くべきなのかもしれないが、万治の石仏だけ見て諏訪市を後にした。
  道の駅"小坂田公園"に軽く立ち寄り、塩尻で国道19号から県道25号に乗った。走行距離が222.2kmになったので、山形村でガソリンを補給。高速を走ってきただけに、7.91リットルしか減っていなかった。ここのGSの従業員さんの印象が非常に良かったので、誰の目にも留まる事はないが、ここで感謝の意を表そう。

 道の駅"風穴の里"で一服して間もなく、雨が降り出した。通り雨にも感じるが、確かに雲は多いので雨具を完全装備する。期待に応えずすぐに止んだが、また何時降るかも分からないので、そのまま安房峠道路を越えた。ツーリングマップルに"あんき屋"という店が乗っていたので、ここで飛騨牛を食する事にした。値段もそれなりで、量もそれなり、良い物で腹を満たすには金がかかるということか。ただ、肉は確実に美味い。私の経験が浅いだけかもしれないが、あんなに食べやすい牛肉は初めて食べたかもしれない。
 店を出て一服していたら、バイクの鍵が見当たらない事に気づいた。焦る私に声を掛けてきてくれた見知らぬライダー。相手は私の事情など知らないので、あくまで雑談である。嬉しいのだがタイミングが悪すぎる。愛想良くしたつもりではあるが、明らかに私は挙動不審だった。誠に申し訳ない事をしたが、こちらもかなり焦っていたのである。幸い鍵は見つかり、雨具を脱いで出発した。

 国道158号を走っていると、"飛騨大鍾乳洞"の看板が現れた。あまり時間に余裕はないのだが、後々になって行きたくなると困るので立ち寄っといた。入洞料は1,000円と高い。但しこれは、"大橋コレクション"というミュージアムの観覧料付きだ。決して悪いものではなかったが、私の時間を割くほどではなく、とっとと鍾乳洞に突入した。
  一週間前に不二洞に行ったばかりだったが、飛騨大鍾乳洞も負けじと素晴らしい。洞内は広く、見所も多い。観光地としては立派である。
 さらに、高山市が"昔の街並み"とやらを売りにしているらしいので、わざわざ市街を通る事にした。確かに古めかしい建物が多く並んでいて良い感じだ。無理な話ではあるが、その古風な家に混じってコンビニ等の現代的な建物が入ってしまうところが残念なところだった。
 そんな感じで寄り道していたら、道の駅"ななもり清見"に着いたのが15時15分。下道を使えば白川郷は絶望的だが、東海北陸自動車道なら24kmの距離だ。ひたすらトンネルの続く自動車道をひた走り、片側一車線しか無かったが後ろから来た車には即座に道を譲り、どうにかこうにかトンネルを抜けきったと思ったら、白川郷は雨だった・・・。
 雲の高さがとにかく低く、確かに雨が降ってもおかしくはない。料金所を抜けて直ぐに雨具をフル装備したが、雨は降ったり止んだりだった。白川郷と言っても、私が訪れたのは萩町集落と思われる。多くの観光客で賑わい、カッパで歩くには場違いな雰囲気だ。有料駐車場にバイクを止めようとしたら、二輪車は停められない旨を告げられた。それでは何処に停められるのか尋ねると、答えがハッキリしなければ、方言に加え年老いているせいで単語そのものがハッキリしない。元々こんなに時間の取れる場所とは思っていなかっただけに、パッと見てサッと立ち去るつもりだったので、路肩にバイクを停めては写真を撮って立ち去った。どうせ五箇山の菅沼合掌集落でも同じ様な光景が見れるのだろう。
菅沼合掌集落には、集落を展望できる駐車場がある。しかし、「エレベーターが17時で止まってしまう為」という理由で、集落付近の駐車場を案内された。この辺になると雨も結構パラついていたので、のんびり立ち寄る気はまるで無い。合掌集落など、要は古ぼけた他人の家があるだけなのだ。もはやそんな思いなだけに、菅沼合掌集落は写真を一枚撮っただけ。相倉合掌集落に至っては割愛した。

 16時50分、五箇山ICから東海北陸自動車道で福光まで行った。国道304号から県道27号に移り、なんとか若干薄暗い程度の時刻に金沢城跡に到着した。いや、到着とは言えない。バイクを何処に停めて良いか分からず、敷地内も入れる時刻が分からなかったので、近くのホテルに泊まろうとした。が、満室もしくは高くて断念。城から離れてしまうが、当初予定していた通り野々市町で一夜を過ごす事にした。
 まずはスーパー銭湯"極楽湯"で疲れを癒す。寝湯の効能はイマイチ分からないが、私には寝転がれた事が何よりの救いだった。珍しく50分ほど居座って、近くのネットカフェ"自由空間"へと足を向けた。私が使う必要は無いが、シャワーがあるので単に寝るだけの個室が欲しい時には最適な場所である。
 カツ丼とペペロンチーノを食べ、旅行記を書き、翌日に備えて寝ようとしたが、なかなか寝付けず2時過ぎまで起きていた。

2008年9月13日土曜日

秩父の先には群馬があった

 2008年9月13日、朝4時に起床した。ようやく眠れたのが3時頃だと思うので、1時間程しか寝ていない。それでも支度を整え、4時50分に家を発った。
 地元でガソリンを満タンにし、小田原厚木道路を使って厚木まで抜けた。国道246号から国道129号へ入って間もなく、一度目の休憩。というか、ここから先を走るのは初めてなので、ルートの確認だ。

 国道16号で八王子に出た。予想以上に栄えた街である。中央自動車道を潜って間もなく、コンビニの駐車場でルートを確認した。それにしても駐車場の狭いコンビニで、この競争の激しい御時世、何故このコンビニが生き残れているのか不思議だった。
  コンビニで休憩したにも関わらず、道の駅"八王子滝山"を発見したので立ち寄った。ゴミ箱のある道の駅"八王子滝山"。それだけにゴミが溢れかえっていた。家庭ゴミでは無さそうだったが、ゴミだけを捨てに来る人も目撃できた。ゴミ箱が無いのは非常に不便に感じるが、こういう現状を見てしまうと、やはり全面撤去するしかないと思える。

 ここまでは快適に来れたのに、県道29号に入ってからは信号に捕まりまくり。しばしば路肩に止まっては地図でルートを確認していた事もあり、意外と時間を喰ってしまった。
 それでも東青梅を無事に抜け、県道28号へと移る。ここから先は自然に囲まれ心地よい。日が昇ってきたのでジャケットを脱いだものの、それでは少し肌寒いほど心地よい土地だ。と、快適な気分を味わっていたら、道を間違え軍畑に出てしまった。被害は少なく直ぐに戻れる距離だったが、ここで尿意を覚えた。高台にある軍畑駅は素通りしてしまい、かといってコンビニがあるとも思えない。で、まぁ立ちション。

 名栗村の長閑さに酔いしれていると、突如山の上に巨大な白い物体が見えた。「あれは何か?あそこを通るのか?」そう思いつつ道を走り、見る角度が変わると、巨大な物体は増殖した。これ全て、鳥居観音の一部である。救世大観音・三蔵塔・平和観音、これらの巨大な物体が山の上にそびえ立っていたのだ。今回は寄っていられないとしても、いつかハイキングに来たいものだ。

 「あとは下って秩父へ到着」と思っていたら、「関東平野を一望!」的な看板を見てしまい、進路を反れてしまった。そこは関八州展望台。看板はチラ見だったので1.6kmで着くと感じたが、どう考えてもそんな高い場所に到達しそうにもない。実際16kmの見間違えだったが、朝早く出て時間に余裕があったので、そのまま進む事にした。正丸峠を越え、刈場坂峠へと登り、関八州展望台へ向かう。
  てっきり広い駐車場のある人気スポットだと思い込んでいたのだが、そこにあったのは見落とし易そうな道標と石柱のみ。あとは5分ほど足で登らなければならない。とはいえ、あまり人が来たような地形をしていない。そして景色も、なんと書こうか・・・。霧がかかっていたせいで平野は見えなかった。しかし、晴れていたとて手前の山々は結構邪魔だろう。かなりの手間ではあったが、行かないままにするよりはマシなので、これはこれで悔いはない。

 刈場坂峠へと戻り、今度は木野峠へと向かう。木野峠を下り始めて間もなく、横転したライダーがいた。とりあえず駆け寄るが、こういう時に何をしたら良いか分からない。とりあえずバイクに脚を挟まれていたので、バイクを起こすのを手伝い立ち去った。いや、一応バイクは走りそうだったし、何をして良いか分からなかったし。

 国道299号へ出て直ぐ、道の駅"あしがくぼ"で休憩。これまでも散々見かけたが、ライダーがかなり停まっていた。
 秩父市へ向かう道中、名栗村に次いでまた山の上に異様な建造物を発見した。位置的に松風山音楽寺だろうか?秩父ミューズパークは立ち寄りたかったが、今回は橋立鍾乳洞を優先した為、コースから外れてしまった。
  道の駅"ちちぶ"でルートを確認し、橋立鍾乳洞へと向かった。私が唯一行った鍾乳洞は、高知県の龍河洞。そのイメージで訪れたら、かなりのギャップに肩を落とした。入洞料は200円と安い。しかし、借りたヘルメットは生乾きの臭いがして冠れるものではなく、洞内は狭く短く、そして、これといった見所がない。良く言えば天然である。「あるがままの姿を味わえ!」という事なら、これは正しい姿だ。しかし退屈なものは退屈だった。
  道の駅"あらかわ"に立ち寄ると、お腹がくだってきたのを感じた。そこでウンコ。道の駅とは、本当に便利な場所である。
 鉄道車両公園に寄ろうとしたが、国道140号沿いに無いどころか看板すら見当たらなかったので、通り過ぎてしまった。時間的に少し急ぎ足になっていた事もあり、ここは引き返さずそのまま前進。何と言っても雷電廿六木橋と呼ばれるループ橋が見たいのだ。そのループ橋、滝沢ダムが背後にあった事もあり、かなり迫力満点。まぁグルリと廻っているだけで、単なる道なのだが。
  中津川大橋の手前から県道216号へと入った。そこから6km程で一つの集落が見えて、少し驚いた。「こんな所にも人が・・・」と思えたが、この辺は道も整備されているし、中津川の釣り客もいるだろう。さらに奥には"ふれあいの森"というのもあるので、不思議という程ではない。それ以上に不思議なのが、小倉沢である。
 上野大滝林道と金山志賀坂林道の分岐点。私は予定と間違って、金山志賀坂林道八丁峠へと向かってしまった。ただ刳り貫いただけの様なトンネル。トンネル内部の岩肌は、凸凹していながらも水によって滑らかになっていて不気味だ。こんな人気の無い山奥で、不気味なトンネルに嫌気が差していたら、一つの集落が現れた。日窒鉱山である。
  現代らしさがまるで見当たらない建物。その背後の山腹に、ドカっと構える工場の様なもの。雰囲気は廃鉱な気がするが、「安全第一」など細かい所で現代の匂いがする。「借金を払えなくなった者が送られるのはこういう所か」と勝手に想像し、写真を撮るのもビクビクしてたが、家に帰って調べてみると、これはこれで生きた鉱山らしい。まぁ生きた鉱山なら、私の推測もあながち間違いではない気がするが、純粋にここを故郷とする方々に申し訳ないので撤回しよう。

 ともあれ、荒れた道・滑らかな岩肌・古びた鉱山、初めて通る者には嫌な感じである。登りに登って「またトンネルだ!」と嫌気が差したが、そのトンネルは綺麗に整備されていた。トンネルを抜けると直ぐに駐車場があり、ライダーが何人かいた。そこから見る山々も美しいが、霧がかかっているのが残念だ。
 延々と山を下り、遂に国道299号に出たと思ったら、すぐ右手に"山梨県","小鹿野町"と書いてある。自分の居場所が分からなくなり、国道を目の前にしながら地図を見た。ここでようやく、私が林道を間違っており、かつ不二洞とスカイブリッジが群馬県にある事を知った。

 恐竜ネタを推している神流町。"恐竜センター"とやらもあり、それなりに金をかけている感はあるが、一番の目玉と思える恐竜の足跡が、岩壁にポツポツと付いているだけなのはインパクトが弱かった。
  その先にある上野村は、完全に成功している。総称して天空回廊と呼ぶのだろうか。BBQができ、コテージもある"まほーばの森"・美しく巨大な吊り橋"スカイブリッジ"・関東一の鍾乳洞"不二洞"。日帰りでも宿泊でも楽しめる素晴らしい場所である。
 国道299号を走っていると、交通誘導員がいたので素直に従い左折してみた。遥か高みに橋らしきものが見えるが、まさかアレではあるまいと思っていたら、ソレが"スカイブリッジ"だった。まほーばの森は大勢の客で賑わい、ビックリ。スカイブリッジはとても綺麗で、高さも充分すぎる。高所恐怖症という程ではないが、この高さにはチトびびる。入洞料600円の"不二洞"に入ると、待ち受けていたのは真っ直ぐに伸びた人工的なトンネルだった。まるで秘密基地にでも行くような気分だ。洞内はとても歩き易く、多数の鍾乳石には仏教に因んだ名称が付けられていて見所がハッキリしている。関東一なだけあり、観光客にかなり優しい環境だ。実に秩父の橋立鍾乳洞とは対照的だ。
 14時15分、天空回廊を後にした。ちなみに、ここまでの走行距離は約230km。

 来た道を戻り、金山志賀坂林道の登り口で一時停車。軽くメモを書いていただけなのだが、そこへ見知らぬ中年男性が声をかけてきた。私と同様にアメリカンのバイクに乗る男性は、道を尋ねてきただけなのだが、とうぜん私が詳しく分かる筈もない。しかし、そこからバイク関連の雑談となる。こういう触れ合いが旅の良さではあるのだが、私は帰り道が長いのだ。なんとしても三国峠から"夕日に映える山中湖"を見たいのだ。なんとか話を切り上げようとしたが、その隙が見当たらない。20分経ってしまっただろうか?ようやく空気を読んでくれたので、私は颯爽と峠を登り始めた。下る前に放尿を済ませ、山々の写真を一枚だけ取った。「追いつかれてはならない。もう話に付き合っている余裕は無い。」と急いだつもりだったが、排気量の差も空しく追いつかれて声を掛けられてしまった。今度は愛想を振りまく気はまるで無い。全身からオーラを発し、会話も強引に終わらせ、そそくさと出発させて頂いた。

 登ってきた時は不気味に感じた道も、一度通ってしまえば恐いものはない。とはいえ、あの滑らかなトンネルだけは嫌いだ。
 陽が傾いてきているのを感じつつ、中津川大橋に到着。15時54分のことだ。大峰トンネルを潜り、さらに2つのトンネルを過ぎて、有料なだけに6.6kmの長さを誇る雁坂トンネルに突入。外気が涼しいだけあって、トンネル内を延々と走るのは寒い。そして疲れている上に寝不足だ。どうにかトンネルを抜けると、2km先に道の駅"みとみ"がある事を知り、もう一息頑張って休憩した。
 そこからは国道140号を走り続けて甲府までノンストップ。流石に山梨市に入ると暖かくなってきた。
 17時30分、甲府市の曽根丘陵公園に到着。ここから銚子塚古墳が一望できないかと期待して来たのだが、残念ながら期待は裏切られた。しかし、休日の家族連れなどには、とても良い場所と思える。
 西の空が曇っている事もあり、陽が沈んだように見えるが、まだ若干の明るみが残っている。なんとか三国峠に間に合わないかと思ったが、精進湖へと抜けた頃には絶望的だった。

 9月ともなると夜の富士五湖周辺は気温が低くなりだすのは、短期住民だっただけに知っていた。しかし、本来は15時前には富士五湖を巡っている予定だった為、厚着の用意はしていなかった。
 目も肉体も疲れ、体は冷えきり、尻も痛い。富士五湖道路で早く帰ろうにも、高速を維持する自信はまるで無い。三国峠で自分のペースを維持しようにも、気温の低さに加え霧が発生してしまったら気力が尽きてしまいそうだ。結局、篭坂峠を大型車の後を追ってノンビリ走り、国道246号を迷惑にならぬ程度に頑張って飛ばして、20時15分に自宅に着いた。

 本日の走行距離は429.8km。燃費は1リットルあたり20.98km。かなり蛇行したアップサイドを繰り返しただけの事はあり、宜しくない燃費だ。
 楽しかったが、かなり無茶な計画だったのは反省せねばなるまい。ちなみに、今回はサイクリング用のパンツを追加して履いていったのだが、なかなかどうして、かなり尻の痛みを軽減してくれたように思える。

2008年8月31日日曜日

シダンゴ山

 2008年8月31日、朝7時に目が覚めたので二度寝をしようとしたが、天気が良い事に気づいた。即座に思考を切り替え、朝食を摂り支度をし、バイクに跨がり寄(やどろぎ)へ向かった。

 寄とは神奈川県足柄上郡松田町の一角にある。松田町と秦野市を繋ぐ国道246号から県道710号へと入り、山間を延々と走ると不意に集落が見えてくる。そこが寄だ。そのまま何処かへ抜けられるわけではないので通過する事もなく、これといった有名所もないので観光にも適していない。知り合いでもいない限り行く事はない土地だ。

 自然休養村管理センター付近に駐車場はあるものの、施設利用者以外駐車禁止の注意書きがあった為、バイクを停めるのに躊躇した。施設は使わないのだが、山に登ろうとする人間を拒むまい。しかも私は場所を取らないバイクである。どうしようもないので、バイクを停めた。
 ここでデジカメを忘れた事に気づく。幸いiPhoneを持っていたが、バッテリー残量20%。極力節約して、後は天に祈るしかない。

 8時26分、シダンゴ山に向けて歩を進める。河原でBBQをやる若者達とは実に対称的だった。
  歩き出してすぐ、橋の上に大きなゴミを発見した。エロ本だ。昨日の雨のせいか、かなり濡れている。海辺や河原にエロ本が落ちているのは分かるが、橋の上に落ちているとは大したものだ(?)。
  歩き出して3分程で、シダンゴ山と宮地山の分岐となった。宮地山にも行く予定だが、ここはシダンゴ山へと向かう。舗装された道が延々と続くのかと不安になる。傾斜は急になり、路面は濡れ、実に歩き難かった。そこいらに脇道があり、自分の進行方向で良いのか自信が無くなる。そこでiPhoneのGPS機能に頼るが圏外・・・。早くも嫌になっていると、一つの扉によって道を塞がれていた。「間違えた・・・もう帰りたい」そう思いながらも良く見ると、猪や鹿の下山を妨げるものらしい。登山者の侵入は許されているのだが、扉を閉めるのを忘れずに。

 扉をくぐるとそこは完全な山道。植林帯の為、木陰が延々と続くのは良いのだが、登りというだけで疲れるものである。途中で水場があったので顔を洗った。これで少し気持ちが楽になったが、そんなものは瞬く間に吹き飛んだ。
 9時9分、「シダンゴ山 20分」の道標を見て少し安心した。なかなか早いペースで登っているではないか。しかし、ここからは階段状の道が続き体力を奪って行く。登っては立ち止まり、登っては立ち止まり、「もう二度と山に登るか」と思うのはいつもの事だ。
 先の方に水色の物が見えたので「頂上の山小屋の屋根だ」と思ったが、よくよく考えると単に空の色である事に気づいた。そもそもシダンゴ山に山小屋など無い。しかし、それは頂上が近い合図である事は、後になって気づいた事だった。
 「シダンゴ山 20分」の長さに嫌気がさした頃、目の前に違った景観が見えた。背の低い木々が並び、道は草地になっている。そこは、なかなか綺麗に整備されたシダンゴ山の頂上だった。登頂してしまえば、今までの嫌な想いなど吹き飛んでしまう。なんとも簡単な性格だ。
  9時26分、シダンゴ山山頂に到着。
 シダンゴ山山頂からは松田町が一望でき、その果てには海岸線まで見える。しかし、それに感激する余裕も無いほど疲れていたので、とりあえず木陰に座り込み一服した。蠅がブンブンと五月蝿いが、もはやどうでも良いほど疲れている。一服を終え素晴らしい景観を堪能し、9時36分、宮地山へと歩を進めた。

 木陰の中を緩やかな坂道が続き、とても快適に下山していくのだが、"宮地山"という以上そこも山である。散々下りてまた登るのだけは嫌である。道中で鹿を目撃したが、知床とは違い警戒心が強くドンドン逃げてしまった。見た事もないような蜘蛛や自然の創り出した芸術に感激しながら進んでいると、登り道となった。
 「こちとら散々楽させて頂いたのだ、少しの登りぐらい軽いもんよ」と思ったのは短い間で、やはり登りは嫌なものだ。ようやく登頂したと思ったら、そこにあるのは道標のみ。どうやら宮地山ではないらしい。では、この山頂は何なのだ!?
  偽山頂から間もなく、巨大な建造物が見えた。こんな山道に建造物、実にオーパーツ的だと思っていたら、単なる鉄塔だった。「とはいえ、こんな所に鉄塔を作っただけでも凄いものである。部材の運搬とかどうしたのだろうか?」と関心していたら、すぐ先に林道を発見してガックリした。
 そこでは舗装された林道に入らず、再び山道を下り、シダンゴ山山頂から50分経った頃、自然休養村管理センターと宮地山へとの分岐点に立たされた。正直もう帰りたい。それでも何とか宮地山へと歩を進め始めてすぐ、「宮地山 5分」の道標が見えた。諦めなくて正解である。
  宮地山山頂には何も無い。景観も楽しめない。休憩するにもベンチが無い。唯一私の気を惹いたのは、明らかに食べたらヤバそうなキノコだった。これを見れただけでも良しとしよう。
 林道と合流し、舗装された道を歩く事になる。ゴールが近い事を感じ一服しながら余裕をこいて歩いていたが、濡れた路面は滑り易く、とても油断できる状態ではなかった。

 民家が現れ始めて間もなく、私の向かう大寺集落方面の道が通行止めになっていた。まさか人も通れないことはあるまいと思い、表示を無視して道なりに歩くと、通行止めの理由が分かった。トラックが脱輪していたのだ。宅配便ならまだしも、それ以外のトラックが何故こんなところまで来たのだろうか?既に消防隊が駆けつけていたのだが、トラックが炎上しているわけでもあるまいし、消防隊とはこんな事まで対処するのだろうか?
 田代向と大寺集落への分岐まで来ると、かなりの消防団員が目についた。消防車も止まっており、山登りを楽しむ私が場違いに感じた。大寺集落へと歩いている最中、一人の消防団員が「この先で放水していますので気をつけて下さい」と声を掛けてくれる。放水?トラックとはまるで別の方向なのだが、どういう意味があるのだろうか?疑問に思いつつ先に進むと、確かに若い2人が放水をしていた。なるほど、消防団員は単なる防災訓練で、たまたまトラックの近くに居合わせただけか。ならばトラックの近くにいた消防団員も、単なる野次馬なわけだ。
 横手に中津川が見え、いよいよ自然休養村管理センターも間近かと思ったら、最後に登りが待っていた。長い距離ではなかったが、それでも辛いものである。そこを登りきると、行きに通ったシダンゴ山との分岐に着き、後は下るだけ。
朝落ちていたエロ本は、まだ落ちていた。朝いたBBQの若者たちも未だ居た。それどころかBBQ客が増えていた。中津川で顔を洗い、11時10分、自然休養村管理センターに到着。
 田代向までは中津川沿いをバイクで走って、県道へと移った。寄、次回BBQをやる時は是非来たい場所だ。

 足腰は鍛えたので、今度はスポーツジムで軽く上半身を鍛える。ロッテリアでエネルギーを補給し、自宅でシャワーを浴びる一方洗濯機を回し、バイクの手入れを軽くして一段落。後は休息に時間を費やすだけだ。