朝8時26分、早川駅前に原付を止めて出発。少し歩いたところで原付の鍵を抜き忘れた事に気づく。いきなりフリダシに戻されたので、そのまま帰りたくなった。
そうもいかないので再スタート。ここ早川は私が幼少時代を過ごした場所だ。海で遊び、川で遊び、山で遊び、私にとっては庭のような土地である。20年以上たった今、再びこの地を庭の様に歩こうとしたが、そこはあまりに小さく感じた。幼い私に遠く感じた距離も、大人となった今では遥かに短い距離に感じた。
そんな調子で石垣山を登り始めるも、流石に登りが続くだけあって疲れる。一夜城跡に着く前には「なんでこんな事してるんだろう?」と疑問に思ったが、それは富士山に登る度に思う事であり、その疑問を超えて、もはや進むしかない状況になるところが楽しいのだ。
短い桜並木を通り抜けた時、まず感動。車でも来れるが、歩いて来た一夜城跡から見る光景に感動。努力の末にある光景なので、より美しく見える。
一夜城跡まで30分ほどで登れた。ここでカロリーメイト1本と煙草を1本補給。まだ時間が早いだけに、私以外に誰もいない。聞こえるのは鳥のさえずりと風が奏でる葉の音だけ。ここで死んでも良いと思えるほど心地よかった。
一夜城跡から先は、私にとって未知の世界だ。 次の目的地は約4km先の佐奈田霊社。 木陰に入ると自然の音色が聞こえて安らぐが、それ以外は単なる山の中。そういう時は感動も薄いので、iPodが役に立つ。
苦もなく進んでいると、橋が見えた。確かに地図上でも川がある。そしてそこには川がある。しかしそこには水がない。なんとも悲しい話だ。
よく見ると、その川底は舗装されている。本当に枯れているのか?必要時のみ水を流すのか?どちらにせよ、魚の住めない川なぞ川ではない。
枯れた玉川沿いを下り、石橋一帯を一望。天気が良いこともあり、かなり先まで見える。佐奈田霊社から少し歩くと、その先にヒルトン小田原が見えた。かなり遠い。そして、かなり上だ。一夜城跡までの道のり以外、これといって苦になる道はなかったが、これから先にまた登り道が待っているのだろうか?
米神に降りると、道のすぐ横を線路が走っていた。ここは鉄っちゃんたちに人気のスポットらしい。緩やかなカーブに加え、今の季節なら桜が咲き、良い写真が撮れるのだろう。この日も二組ほどいた。
線路から離れると、ヒルトン小田原まで登りが続く。既に7.7kmほど歩いた上で、登り道を迎えるのは非常に辛い。
片浦に差し掛かると、再び素晴らしい景色が待ち受けている。写真に収めようとすると手前の木々が邪魔なのだが、目で見る分には支障がない。かつて”東洋のリビエラ”と賞賛されたらしい片浦。リビエラがどういう意味なのかは知らないが、まぁ悪い例えではないのだろう。
パンフレットによると房総半島や横浜のランドマークタワーまで見えるらしいが、たとえ見えてもそれがそうだと認識するのが難しい。幾層にも重なる山の向こうにビルらしき物がボンヤリ見えたので、私の中ではそれがランドマークタワーということにしておいた。
牧谷川まで来ると、そこから先はヒルトン小田原の敷地内を歩くことになる。時間帯に制限があるので、通れない時は別ルートを使う事になる。
敷地内と言えども山の中である。川沿いにひたすら登り、その先に階段があった時は愕然とした。もう帰りたい・・・
階段を登ると休憩所があったので、ここで一服。木に囲まれていて心地よい。
ヒルトン小田原からは下るだけ。道中、根府川駅の近くにある白糸川鉄橋を見下ろす事ができる。下から見上げると美しい景観らしいが、それは上から見下ろしただけでも想像できる。桜も咲いていることだし、是非とも見上げたいところだが、根府川駅に着いた時点で私の心は折れていた。
根府川駅に着いたのは11時28分。1人だったこともあり、3時間で到着した。良い運動になったし、達成感もある。クセになるものでもないので、もう一度挑戦する事はないと思うが、興味がある人には薦めたいコースだ。
根府川駅から早川駅はJRで一駅。帰り道、桜満開の小田原城による。この時期の小田原城は本当に美しい。
今まで小田原城なんて大した城ではないだろうと思っていた。城の真下はヘボい動物園になっているし、さらにはヘボいテーマパークもある。なんとも城を侮辱している。
けど、私も幼少の頃はそこで楽しんだ1人であり、週末に家族が楽しむには良い場所だろう。そう考えると、これはこれで1つの形かもしれない。
小田原城はとにかく混んでいた。桜で安らぎたいものの、こんなに人がいては落ち着けない。のんびり焼きそばでも食べながら桜と城を堪能しようとしたが、写真だけ撮って退散した。
桜華咲くこの時期、小田原が年間で唯一美しいと感じる事ができる時期である。小田原を訪れる機会があれば、是非この時期を選んで欲しい。他の時期の小田原は、居酒屋とパチンコ屋率の高い低俗な繁華街である。