2008年8月31日日曜日

シダンゴ山

 2008年8月31日、朝7時に目が覚めたので二度寝をしようとしたが、天気が良い事に気づいた。即座に思考を切り替え、朝食を摂り支度をし、バイクに跨がり寄(やどろぎ)へ向かった。

 寄とは神奈川県足柄上郡松田町の一角にある。松田町と秦野市を繋ぐ国道246号から県道710号へと入り、山間を延々と走ると不意に集落が見えてくる。そこが寄だ。そのまま何処かへ抜けられるわけではないので通過する事もなく、これといった有名所もないので観光にも適していない。知り合いでもいない限り行く事はない土地だ。

 自然休養村管理センター付近に駐車場はあるものの、施設利用者以外駐車禁止の注意書きがあった為、バイクを停めるのに躊躇した。施設は使わないのだが、山に登ろうとする人間を拒むまい。しかも私は場所を取らないバイクである。どうしようもないので、バイクを停めた。
 ここでデジカメを忘れた事に気づく。幸いiPhoneを持っていたが、バッテリー残量20%。極力節約して、後は天に祈るしかない。

 8時26分、シダンゴ山に向けて歩を進める。河原でBBQをやる若者達とは実に対称的だった。
  歩き出してすぐ、橋の上に大きなゴミを発見した。エロ本だ。昨日の雨のせいか、かなり濡れている。海辺や河原にエロ本が落ちているのは分かるが、橋の上に落ちているとは大したものだ(?)。
  歩き出して3分程で、シダンゴ山と宮地山の分岐となった。宮地山にも行く予定だが、ここはシダンゴ山へと向かう。舗装された道が延々と続くのかと不安になる。傾斜は急になり、路面は濡れ、実に歩き難かった。そこいらに脇道があり、自分の進行方向で良いのか自信が無くなる。そこでiPhoneのGPS機能に頼るが圏外・・・。早くも嫌になっていると、一つの扉によって道を塞がれていた。「間違えた・・・もう帰りたい」そう思いながらも良く見ると、猪や鹿の下山を妨げるものらしい。登山者の侵入は許されているのだが、扉を閉めるのを忘れずに。

 扉をくぐるとそこは完全な山道。植林帯の為、木陰が延々と続くのは良いのだが、登りというだけで疲れるものである。途中で水場があったので顔を洗った。これで少し気持ちが楽になったが、そんなものは瞬く間に吹き飛んだ。
 9時9分、「シダンゴ山 20分」の道標を見て少し安心した。なかなか早いペースで登っているではないか。しかし、ここからは階段状の道が続き体力を奪って行く。登っては立ち止まり、登っては立ち止まり、「もう二度と山に登るか」と思うのはいつもの事だ。
 先の方に水色の物が見えたので「頂上の山小屋の屋根だ」と思ったが、よくよく考えると単に空の色である事に気づいた。そもそもシダンゴ山に山小屋など無い。しかし、それは頂上が近い合図である事は、後になって気づいた事だった。
 「シダンゴ山 20分」の長さに嫌気がさした頃、目の前に違った景観が見えた。背の低い木々が並び、道は草地になっている。そこは、なかなか綺麗に整備されたシダンゴ山の頂上だった。登頂してしまえば、今までの嫌な想いなど吹き飛んでしまう。なんとも簡単な性格だ。
  9時26分、シダンゴ山山頂に到着。
 シダンゴ山山頂からは松田町が一望でき、その果てには海岸線まで見える。しかし、それに感激する余裕も無いほど疲れていたので、とりあえず木陰に座り込み一服した。蠅がブンブンと五月蝿いが、もはやどうでも良いほど疲れている。一服を終え素晴らしい景観を堪能し、9時36分、宮地山へと歩を進めた。

 木陰の中を緩やかな坂道が続き、とても快適に下山していくのだが、"宮地山"という以上そこも山である。散々下りてまた登るのだけは嫌である。道中で鹿を目撃したが、知床とは違い警戒心が強くドンドン逃げてしまった。見た事もないような蜘蛛や自然の創り出した芸術に感激しながら進んでいると、登り道となった。
 「こちとら散々楽させて頂いたのだ、少しの登りぐらい軽いもんよ」と思ったのは短い間で、やはり登りは嫌なものだ。ようやく登頂したと思ったら、そこにあるのは道標のみ。どうやら宮地山ではないらしい。では、この山頂は何なのだ!?
  偽山頂から間もなく、巨大な建造物が見えた。こんな山道に建造物、実にオーパーツ的だと思っていたら、単なる鉄塔だった。「とはいえ、こんな所に鉄塔を作っただけでも凄いものである。部材の運搬とかどうしたのだろうか?」と関心していたら、すぐ先に林道を発見してガックリした。
 そこでは舗装された林道に入らず、再び山道を下り、シダンゴ山山頂から50分経った頃、自然休養村管理センターと宮地山へとの分岐点に立たされた。正直もう帰りたい。それでも何とか宮地山へと歩を進め始めてすぐ、「宮地山 5分」の道標が見えた。諦めなくて正解である。
  宮地山山頂には何も無い。景観も楽しめない。休憩するにもベンチが無い。唯一私の気を惹いたのは、明らかに食べたらヤバそうなキノコだった。これを見れただけでも良しとしよう。
 林道と合流し、舗装された道を歩く事になる。ゴールが近い事を感じ一服しながら余裕をこいて歩いていたが、濡れた路面は滑り易く、とても油断できる状態ではなかった。

 民家が現れ始めて間もなく、私の向かう大寺集落方面の道が通行止めになっていた。まさか人も通れないことはあるまいと思い、表示を無視して道なりに歩くと、通行止めの理由が分かった。トラックが脱輪していたのだ。宅配便ならまだしも、それ以外のトラックが何故こんなところまで来たのだろうか?既に消防隊が駆けつけていたのだが、トラックが炎上しているわけでもあるまいし、消防隊とはこんな事まで対処するのだろうか?
 田代向と大寺集落への分岐まで来ると、かなりの消防団員が目についた。消防車も止まっており、山登りを楽しむ私が場違いに感じた。大寺集落へと歩いている最中、一人の消防団員が「この先で放水していますので気をつけて下さい」と声を掛けてくれる。放水?トラックとはまるで別の方向なのだが、どういう意味があるのだろうか?疑問に思いつつ先に進むと、確かに若い2人が放水をしていた。なるほど、消防団員は単なる防災訓練で、たまたまトラックの近くに居合わせただけか。ならばトラックの近くにいた消防団員も、単なる野次馬なわけだ。
 横手に中津川が見え、いよいよ自然休養村管理センターも間近かと思ったら、最後に登りが待っていた。長い距離ではなかったが、それでも辛いものである。そこを登りきると、行きに通ったシダンゴ山との分岐に着き、後は下るだけ。
朝落ちていたエロ本は、まだ落ちていた。朝いたBBQの若者たちも未だ居た。それどころかBBQ客が増えていた。中津川で顔を洗い、11時10分、自然休養村管理センターに到着。
 田代向までは中津川沿いをバイクで走って、県道へと移った。寄、次回BBQをやる時は是非来たい場所だ。

 足腰は鍛えたので、今度はスポーツジムで軽く上半身を鍛える。ロッテリアでエネルギーを補給し、自宅でシャワーを浴びる一方洗濯機を回し、バイクの手入れを軽くして一段落。後は休息に時間を費やすだけだ。

2008年8月16日土曜日

東伊豆から中伊豆ツーリング

 2008年8月16日、朝5時15分に家を出て、小田原でガソリンを満タンに補充。伊豆方面の空には雲がかかっていた。寝起きなだけに、もう帰りたい気分だ。
  真鶴道路と熱海ビーチラインを使い、6時には熱海城に到着。何の歴史も持たない偽りの城”熱海城”。近くには秘宝館があり、日本一最低の城である。こんな時間に来ているだけあって、中に入る気はサラサラ無かったが、思いのほか大きな城だったので、そこから熱海市街を見てみたいとは思った。
 6時半には道の駅”伊東マリンタウン”に到着。伊東市民だった事があるので、ここまでは良く知る道である。ここから先が長いものと思っていたが、残り60kmも無かった。一昨日に北海道から帰ってきたばかりの人間からすると、60kmなど短い距離である。
  17km程先の城ヶ崎海岸へと寄った。ここで気をつけたいのは駐車場の選択だ。先に目につく伊豆海洋公園の駐車場は1日1,000円、二輪車は無料。この周辺を堪能するにはここでも良いが、先へ行くと城ヶ崎海岸用の駐車場もあり、こちらは1日500円、おそらく二輪車も有料。城ヶ崎海岸だけに用があるなら、後者を選択すべきだろう。

 伊豆海洋公園の駐車場に停めてしまった私は、1.1kmの距離を歩いて城ヶ崎海岸を目指す。険しい海岸、打ち付ける波、これが何人もの命を奪った城ヶ崎の姿か。と書きつつも、ここに来るのは3,4度目である。起伏のある道を歩きながら「もっと近い駐車場があった筈だ」と思いつつ、いざ城ヶ崎海岸の駐車場を目にした時は愕然とした。吊り橋を渡った後、同じ道を引き返す気は起きず、道路沿いを歩いて戻った。


  以前走った時、街並が気に入った場所があった。そこの地名が何だったのかを確認するのも今回の目的だったが、いざ目の当たりにしてみると、以前ほどの感動を感じなかった。その場所は静岡県賀茂郡東伊豆町片瀬。街並が綺麗な事は確かなのだが、私が美化しすぎていたのかもしれない。

 私の尻に限界が来たので、バイクを路肩に停めて小休止。走り出して気づいたのだが、下田市への境目はすぐそこで、駐車場も目と鼻の先にあった。
 既にクラゲも出ていて海水浴客などいまいと思っていたが、白浜海岸には結構な人がいた。今でもかつての知名度はあるのだろうか。のんびり水着ギャルを眺めたいところだが、気楽に停められるスペースも無く、先へと進んだ。
8時49分、道の駅”開国下田みなと”に到着。名前の通り、港と一体化している。ならば寿司を食べようと思ったが、開店時刻の11時まで待てる筈も無く、金目鯛を使った下田バーガーを食べた。値段が1,000円という事もありボリュームはある。しかし金目鯛は煮るのが一番だ。

  この辺は遊び甲斐があり、下田海中水族館ぐらいは行きたかったのだが、渋滞にだけは巻き込まれたくないので帰路につくことにした。

  下田市から河津町へと北上し、25km程でループ橋に差し掛かる。グルリグルリと回る道、ただそれだけではあるのだが、一度は走ってみたい道だった。このループ橋の直前で、河津七滝への入り口がある。ループ橋を通過した後でも”水垂”バス停付近から河津七滝へは行けるので、私は後者を選んだのだが、これが大失敗だった。
 七滝全てを見ようとは思っていなかった私に、展望のマークが見えた。猿田淵、そこからある程度まとめて見れるのならと思い歩いてみたが、何処が展望台なのか分からない。何やら全長1.5kmの”自然とふれあいコース”とやらに足を踏み入れてしまったようだ。たかが1.5km、それで七滝全て見れるものと思い歩いてみたが、そこは単なる山道だった。川沿いを歩くわけでもなく、とうぜん滝など見れやしない。仕方なく自然と触れ合っていると、景色が開け目の前にはループ橋が見えた。何処からか一望できないと思っていたループ橋、これで歩いた価値が見いだせた。しかし、これだけ歩いてループ橋が同じ高さに見えるって、私は何処にいて何処に向かっているのだろうか?
 急な坂を下ると河津七滝のスタート地点に着いた。出合滝を見に降りたが、メインとなる大滝はまた別コース。もう疲れたので、大滝はどうでも良くなった。黒ごまのソフトクリームを食べながら休憩するが、汗が滝の様に流れ落ちてくる。なんとか駐車場に戻ろうと、今度は川沿いを歩き続ける。見所のあった滝と言えば、初景滝と釜滝ぐらいだろう。
 駐車場の場所が分からない。考えたくないが、釜滝から上へ上がる階段しか思い当たらないので、仕方なく階段を登っていった。長い階段を登った先に、ようやく私のバイクを見つけた。かなり余計に歩いている。河津七滝を見るならば、ループ橋の下から見始める事を薦めたい。

 ループ橋から9km程で、道の駅”天城越え”に到着。一服しただけでは尻の痛みはひかないし、かといって何をするわけでもない。早く家に帰りたい。

 道の駅”天城越え”を出て間もなく、全く進まぬ渋滞に出くわした。すり抜けながらも徐々に前に進むと、とある異常に気づく。対向車は対向車で、こちらの車線を使って追い越しをしている。工事で片側一方通行になっているわけでもなく、どうにもおかしい。強引に反対車線を使って追い越してみると、浄蓮の滝の駐車場から続く行列だった。後続車の大半は単なる渋滞だと思っている筈。浄蓮の滝に用が無い人も多数いるわけで、なんとも迷惑な話だ。

 伊豆市から修善寺町にかけて、かなり渋滞していた。修善寺道路と伊豆中央道を使い、三島市に出れば道路が広いので抜かし放題。国道1号線を通り、箱根へと登る。伊豆中央道の辺りから尻の痛みは限界に近く、早く何処かで休みたかった。
 13時15分、道の駅”箱根峠”に着いたので、少しでも尻を回復させようとするが、これはもちょっとやそっとじゃ回復するものではない。
 芦ノ湖に向けて渋滞も酷く、少しでも追い越して先を急ぐ。箱根湯本から小田原にかけて混んでいるのは予測できるので、宮の下で138号へと逃げ久野林道を使って回避。
帰りがけにガソリンを満タンにする。朝利用したスタンドからの走行距離が226.9km、消費した燃料が8.29リットル。全体の道のりや状況を考慮しても、悪くない燃費か。

 約236kmの道のりを走りきり、15時、我が家に到着。ツーリングは楽しいのだが、尻が痛くなるのだけはどうにかしたい。

2008年8月15日金曜日

夏の北海道ドライブ その5

 朝5時半に目が覚め、二度寝するのも良かったが、人のいない内に帯広駅を見たくて外に出た。部屋に戻り、ひたすら日記を打ち続ける。忘れない内に書きたいのと、地元に帰ってからの休暇を満喫する為だ。

 9時10分、帯広東急インをチェックアウトし、緑ヶ丘公園内のおびひろ動物園へ向かった。道中ガソリンスタンドに寄り、ガソリンを満タンにする。空港近辺にスタンドは無いので、市街地で満タンにして返さなければならない。ついでに水洗いだがマーチを洗車してもらう。長い道のりを付き合ってもらい、大変感謝している。

 9時52分、おびひろ動物園に到着。檻の中に動物を入れました的な普通の動物園だが、アトラクションも複数あって子供連れには良い場所ではないか。旭山動物園とは対照的な平凡な動物園。しかし、混んでいないということは何よりの魅力だ。
 動物など何処で見ても同じなので、立ち止まる事なく園内を周る。するとジェットコースターらしき物が見えてきたが、短い・・・短すぎる。この"世界一短いと思われるジェットコースター"が、おびひろ動物園の売りなのだろうか。
10時半におびひろ動物園を出て、10分後には真鍋庭園に到着。庭園というだけあって、そこには植物があるだけなのだが、とても綺麗に整備されている。敷地はかなり広く、一番長いノウサギコースだと所有時間60分。植物の名前を知らない私は、何処で歩みを止めようか考えている内に30分で歩ききってしまった。
 是非とも雪化粧をした真鍋庭園も見てみたいが、開園期間は4月中旬から12月上旬まで。かなり望みは薄いわけだ。

 国道236号から紫竹ガーデン遊華へ向けて右折すると、遥か先まで一直線に伸びた道になる。地図で見ても20km以上続く直線。ただし、見通しの悪い交差点でも信号が無いことは多いので、事故には気をつけたいところだ。
 トドワラとは対照的に、様々な花が植えられた紫竹ガーデン遊華。季節に合わせて様々な花が堪能出来るメルヘンな場所だ。こういう場所を楽しめるよう、私も草花の名前を覚えると良いのだろう。
 とかち帯広空港まで16kmほどの距離なので、フライトまでの時間を潰すには良い場所だ。
 12時10分に紫竹ガーデン遊華を発ち、10分後には幸福駅に到着。男一人で何の幸福を願うのか。幸福という幻想に惑わされたカップルどもめ、幸せというのは自分の力で掴み取るものだ。

 12時35分、マツダレンタカー帯広空港店に到着。走行距離は1,886km。マツダを利用したのに車は日産車だったので、どう誉めて良いのか分からないが、素晴らしい相棒を有り難うございました。

 15時20分の便に乗る予定だったが、13時15分の便に乗ることが出来た。昨晩食べた豚丼以降お菓子を少し食べただけなので、かなりお腹が空いている。自宅で食べる夕飯まで我慢しようとしたが、電話を掛けても誰も出ず、自宅での夕飯には期待できない。
 京急線からの乗り換えがてら、横浜で食べる場所を探した。ペッパーランチでペッパーライスをガッツリ食べ、17時3分、鴨宮駅に到着。珍しくバスに乗って帰宅した。
 北海道の涼しさを忘れさせる程、嫌な暑さにゲンナリだ。

夏の北海道ドライブ その4

 2008年8月13日、 3時半に目が覚めたので、支度をしながら日の出を待ったが、雲っているので期待はできなかった。4時40分、やはり見れなかったが、やるだけやったので悔いは無い。
  北海道を走っていると、虫の特攻やら鳥のフンやらを受けて、たちまち車は汚れてしまう。旅の相棒マーチに感謝の意を表し、洗車をし始めて間もなく、朝立ちが来た。私のではない。雨が降り出したのだ。なんと絶妙なタイミングだろう。15分程で止み、再び洗車を開始。道の駅"さるふつ公園"の写真を撮り、6時に出発した。
  6時半、日本最北端の地"宗谷岬"に到着。残念ながら樺太は見れなかった。平和公園に登っても、やはり樺太は見れず。まぁ雨が降っていないだけ良いだろう。

 早くも睡魔に襲われ、ふと目を閉じると意識が飛ぶ。かなり危険な状態だったので、稚内市街に入ってからセイコーマートで停車。ここで寝るのも悪いので、コーヒーを飲んで煙草を吸って立ち去った。
 稚内駅に立ち寄りつつ、7時45分、野寒布岬に到着。雲の向こうに薄らと山が見える。あれが利尻山だろうか。利尻島か礼文島か分からないが、とにかくいずれかを見たわけだ。

 あきかわ屋2階の海鮮レストラン"シピリケ"で食事を摂った。ウニ・イクラ・ホタテが乗った三色丼。香の物と鉄砲汁が付いて1,800円。ここから先は内陸部に入るので、これが最後の海鮮物となるだろう。
歯を磨き、車の中で寝ながらノシャップ寒流水族館が開くのを待つ。9時になり入場すると、早速ゴマフアザラシとペンギンが待っていた。狭くて浅いプールに13頭のゴマフアザラシ、これで良いのだろうか?中に入ると、見たような・・・いや、食べたような魚が大半を占めていた。通年なのか時期的なものなのか、金魚も展示してあり、趣味と仕事(漁業)の延長でやっているような感じがした。稚内という地の、しかも市営の水族館なだけに、期待しとかなくて良かった。入場料は400円、私は何処でも立ち止まらない質なので、5分程で見終わった。

 9時10分、262km先の神居古潭へ向け南下を開始した。休憩を取ろうにも、最初の道の駅は、化石が売りらしい道の駅"なかがわ" 。10時43分に到着し一休み。神居古潭まで、あと167km。

 昨日ウトロで入れたガソリンも残り1メーターとなったので、音威子府で20リットル補給した。これまでの経験上、これで帯広まで戻れるだろう。
 11時47分、道の駅"びふか"に到着し、美深産の羊乳を飲んだ。400円と値は張るが、まろやかで美味しかった。

 通行料無料の名寄バイパスを通り快適に距離を縮める事が出来たが、士別市内に入るとペースが落ちた。道の駅"もち米の里なよろ"を素通りしてしまった事もあり、そのまま休まず士別剣淵ICから道央道に乗った。最初のPAは20km以上先にある比布大雪PA。散々80km/hで走ってきた割に、高速道路で90〜100km/hを維持するのには、やたらと疲れを感じた。自分でも何処を見ているか分からない、かといって休むこともできない。危険を感じながらも何も出来ないまま、13時20分、なんとか比布大雪PAに着いた。
  比布大雪PAには展望台があり、実に綺麗にデザインされている。ストーンサークルの様なモニュメントに近づくと、空のペットボトルが置いてあった。しかも吸殻が2つも落ちている。同じ喫煙者として恥ずかしい事である。これだから喫煙者は嫌われるのだ。もちろん、これらは回収して捨てた。

 20分ほど休んで出発したが、やはり視点は定まらない。これは私が疲れているからではない。景色が開けすぎているのだ。両サイドは開け、前には遥か先の山。目的とする物が無いから運転しづらいのだ。たまにサイドに木々があると、いつも通りスピードを出しやすい。一般道よりスピードを出しにくい高速道路というのも、どうしたものか。
 無事に道央道を降り、神居古潭へと向かう。さすが旭川市なだけあって、嫌な感じに渋滞している。
  14時12分、神居古潭に到着。何も無い所だと思っていたが、かなり素敵な場所だった。石狩川を跨ぐ白い橋、そして神居古潭の駅とSL。もっとオカルト的な場所かと思っていたが、そうでも無かった。ハイキングコースがあり、30分ほど歩けばストーンサークルがあるらしい。時逆と時順の待っている洞窟は何処だろう。是非とも登りたいところだが、半ズボンと壊れたサンダルなうえ時間的にも余裕が無いので諦めた。

 本格的な渋滞に苛立ちを覚えながらも、15時17分、旭山動物園に到着。今回の旅行に都会的なものは求めていないので、渋滞とか受け入れられない。それに加え、園内の混雑。人、人、人、お盆休みだから仕方ないが、とにかく人だらけ。人気のペンギン・アザラシ・ホッキョクグマなど、とても見れる状況ではない。
 男の一人旅に似つかわしくない状況ゆえに、園内を一周する気も起きず、30分も経たないうちに退散。けっきょく私が見たのは、ヒトとサル、サル目の生き物だけである。
  とにかく旭川という町から抜け出したく、美瑛へと急いだ。道の駅"びえい「丘のくら」"を目指す道中、美しい花畑が目についた。ぜるぶの丘である。少し立ち寄り花を堪能。バギーを運転して花畑を周れるらしいが、それほど長い距離でもなかったので、これは断念。こんな美しい場所があるのだ、美瑛という町は花と緑に囲まれ、のんびりできる場所なのだろう。そう思っていたが、何処にでもある地方の町だった。
 16時45分、新栄の丘に到着。これまでに比べると、感激するほどの景色は待っていなかった。かなり早く予定を消化してしまっている為、美瑛か富良野で宿を取って自然を満喫しようと思っていたが、まず美瑛は消えた。計画の修正をしようとiPhoneを使おうとするが、新栄の丘は圏外。国道へ出て、想い出のふらのという場所があったので、そこの駐車場で宿を探した。
「北の国から」で有名な富良野だが、私は「北の国から」を一度も見たことがないので興味が無い。ネット回線があって手頃な値段の宿を探したが、見つからない。どうでも良くなり、予定を一日早めて帰る事にした。JALに電話し、マツダレンタカーに電話し、帯広に宿を取る。計画の修正が終わったところで気づいたのが、帯広まで140km以上あることだった。

 もはや富良野という土地はどうでも良かったが、とりあえず富良野駅の写真だけ撮った。暗くなる前に先へ進みたい。道の駅"南ふらの"にも立ち寄らず、休まず走り続ける。70km/h以下で走る車に悩まされることもあったが、追い越せる時は容赦なく追い越し、南富良野を過ぎた辺りから良い流れに乗ることが出来た。何台もの車が80km/h前後を維持し続ける素敵な状態。しかし、彼らは霧の中もその状態を維持し続けた。霧の中なだけに前の車を見失いたくはなかったが、前後の車を意識しながらスピードを維持し続けるのは辛く、遂には登坂車線へと回避した。
 途中で休もうとも思ったが、距離が近づくにつれ、もう一息と思ってしまう。霧が晴れた後は結局80km/h前後で走り続けた。
 残り18kmというところで、山の向こうの空が焼けて見える。帯広の灯りだ。市内に入り、ようやくセイコーマートで停車。壊れたサンダルとは、ここでおさらばだ。

 20時半、帯広東急インに到着。今日だけで500km以上走っているのだ、疲労感よりも平衡感覚がおかしいのを強く感じた。豚丼と生ハムのサラダをを食べ、のんびり湯船に浸かった。なんとか日記を書くのを進めようとしたが、流石に疲れ果てて寝てしまった。

 この日の走行距離は556km。累計で1,838kmである。

夏の北海道ドライブ その3

 2008年8月12日、寒さのせいか、4時前に目が覚めてしまった。厚めのパーカーを持ってきて正解だった。外を見ると明るくなりつつあるが、雲がかかっている。後ろを見ると、山に雲がかかっていた。今日の天気は曇りか・・・。
 身支度を整え4時半には道の駅"知床・らうす"を発った。ナビに翻弄されながらも羅臼国後展望台に到着。海の向こうに薄らと国後島が見える。曇りだが見れて良かった。
 ひかりごけを見に行くと、落石注意のため立入禁止となっていた。ロープを越えて数メートルの距離なので行けない事もないのだが、そこは大人というか、あまり興味なかったというか、その場所全体の景観が良かったので満足できた。

 知床五湖方面へ向かいつつ、羅臼の間歇泉に立ち寄った。1時間に1回、数秒間、地面から蒸気が噴出すという。最初は気づかなかったが、10分ほど経つと湯気の量が増えてきたことに気づいた。気のせいかもしれないし、これからまだまだ時間がかかるのかもしれない。寝転がったり写真の撮る位置を決めたりして、さらに10分が過ぎた。さらに湯気の量が増しているが、まだまだだろう。iPhoneで遊んでいると、背後でポンっと音がした。
  急いで振り向くと、見事に蒸気が噴出していた。生で見たいし、写真にも撮りたいし。ある程度角度を決めたら、シャッターは適当である。15〜20秒ほどの出来事だったろうか。5時49分、私はこの光景を独り占めした。

 羅臼からウトロへ抜けるのに、峠を越えるとは思っていなかった。目の前にあるのは山なのだ、当然と言えば当然だが、今朝までその事を知らなかったのだ。ガソリンの残量を気にしながら峠を登る。これも予想できた事だが、待っていたのは霧だった。かなり視界が悪い。燃費が心配だ。そうこうしてたら、徐々に明るくなってきて、遂には雲を抜けた。そして、そこに待っていたのは雲海。だけならまだしも、雲海から突き出した山々が神秘的だ。知床峠に着いた頃には快晴で、雲海と山々を見て感激していた。
  「山を下ると再び雲に覆われてしまうのだろう」そう思っていたが、知床五湖方面は雲があれども晴天。ウトロ以降は雲一つ無い快晴が続き、むしろ暑かった。
 6時40分、知床五湖に到着。しかし18:30から翌7:30まで、駐車場への入り口は閉ざされている。そこらに自然の鹿がいるので眺めるも良し、朝早かったので車の中で横になるのも良し。早く動いてもスタンドが開かなければ、ガソリンが先に尽きてしまうかもしれない。私には悪くない時間だった。
  時刻になり入場開始。ヒグマ発生のため、見れるのは一湖と二湖だけだった。7月下旬に来た人から既に聞いて覚悟は出来ていた為、悔いは無かった。
 誰よりも先にヅカヅカと進んでいく私。熊除けの鈴を持っていなかったが、いざとなったらiPhoneから音楽を流せばよい、と甘い心の準備はしていた。残念というか幸いというか、熊には遭えなかったものの、鹿とはかなり近い距離で遭えた。あちらの領域なだけあって、全く動じていない。かといって触ろうとするのも軽率なので、目と目を合わせただけだった。

 ウトロでガソリンを満タンにし、8時43分、道の駅"うとろシリエトク"に到着。羅臼から知床にかけて散々鹿を見てきたので、今度は喰らう側に回り鹿肉バーガーを食べた。ミンチしてしまっては、どの肉も似たようなものだろう。朝食は食べたし、一服をして、歯を磨いて、9時半に出発した。
  通りがけに気づいた三段の滝に立ち寄り、それからオシンコシンの滝へ。滝と言うと一束の水が流れ落ちるイメージだが、オシンコシンの滝はドバドバと豪快に流れ落ちている。その迫力に開いた口が閉まらなかったが、その感動も同滝の駐車場で見かけたバスガイドさんの可愛さの前には吹き飛んでしまった。「このまま車を捨てて、斜里バスに乗り込みたい」そう思いはしたが、無理な話である。

 朱円環状土籬(どり)は、まるで人気が無かった。まず駐車場が無い。人気が無いから駐車場が無いのか、駐車場が無いから人が来ないのか、どちらにせよ草ボーボーのこの遺跡に、それ程の魅力は感じなかった。ストーンサークルというから、かなりのミステリー度を求めていたのに・・・。だがこれでは朱円という地に申し訳ないので、近くにある竪穴住居跡群を見に行くことにした。しかし、少しだけ引き返す羽目になるので、中止にした。

 網走刑務所まで30kmを切って間もなく、道の駅"はなやか小清水"が見えた。それほど疲れていなかったので通り過ぎたが、その後すぐに見えた広大な景色は、私の歩を止めることに成功した。
  濤沸湖である。駐車場から馬小屋が見えた。木の歩道を歩いて近づくと、そこは展望台兼馬小屋だった。係員らしき人はいない。初めての馬タッチ。改めて見ると、相当デカイ。かなり人懐っこかったが、その迫力に少し怖さも感じた。
  11時35分、網走刑務所に到着したが、一般用の駐車場が無かった。どうやら本物に来たらしい。私の目的はニポポ人形を買う事だったので、むしろ本物が正解だった。
 ここまで来たのだ、博物館網走監獄にも行っておくべきだろう。車なら遠くないが、歩くにはちと距離がある。道中、博物館網走監獄を目指す大荷物を持った御老人が歩いていたので、声を掛けて乗せてあげた。私がニポポ人形を買った際、ちょうどこの方が店員さんに博物館網走監獄の場所を尋ねていたのだ。これを知っていて知らん振りはどうかと思う。とはいえ、逆ヒッチハイク。しかも男性の御老体。私の趣味なわけないが、なんと色気のない旅だろう。
  博物館網走監獄。正直どうでも良い。とりあえず入場して一通り回ったが、若い女性観光客の生脚にばかり目が行く。写真を撮ろうとしたが、タイミング・角度、どちらを事前に確認しても、生脚しか狙っていないのがバレバレだ。このまま監獄行きも嫌なので、地団駄を踏んで立ち去った。

 道の駅"さろま"を越えて少しのところを左折すると、サロマ湖展望台へと行ける。しかし、その道は4kmの砂利道で車一台分の幅しかない。すれ違えるポイントも多くなく、対向車が来ないことを祈るだけだ。
  展望台からはサロマ湖が一望できる。こうして見るとサロマ湖は、履いているのか履いていないのか分からない下着の様である。かろうじてサロマがあるから湖であって、ほとんど海の一部と言っても良いのではないだろうか。
  2車線なのに4車線並の広さ、平凡な商店街、広い歩道に停められた車、この光景は中国だ!と思ったが何か足りない。二輪車道が無いからか。そんな街並みが遥か先まで続いている様に見えて綺麗だった。それに負けず劣らず、道の駅"かみゆうべつ温泉チューリップの湯"も綺麗だった。道の駅自体はそうでもないが、実物大の鉄道と駅など、全体像がとても素晴らしかった。
  カラスの行水が日常の私にしては珍しく温泉を堪能し、いちご牛乳を飲んでリラックス。14時34分から70分、こんなに私が日帰り温泉に居座る事はあり得ない。
 道の駅から出ると、外は涼しくなっていた。これまで快晴だった空に、雲がかかってきたのである。涼しくなるのは結構だが、また今日も私から星空を奪うのか。

 国道238号を60km/hで走る車、それを追い越さない車たち、タイミングを伺っては1台抜き、また1台抜き、と先頭車両を含め8台ほど抜かした。どいつもこいつも、この速度でよく我慢できるものだ。
 紋別市街に入ると、今度は平均時速50km/hが一般的に感じた。80km/hで走り続けている私には、かなりストレスを感じさせる。
 ナビに翻弄され、紋別公園の良く分からない所へ案内されるは、ようやく辿り着いたのは裏側の駐車場だわで、またストレスを感じた。

 丘の上にある紋別公園。16時半で人気がない。いるのは多数のカラスのみ。曇天の夕刻である事と、私の苛立ちが重なり、紋別の街には死の臭いしか感じなかった。ここはゴーストタウンである。もしくは、日没を境に何かが起きるのだろう。私が想像したのは伊藤潤二の世界である。こういう場合、地元の若くて可愛い娘に声を掛けられ、誘いに乗ったが最後、となったりするのだろう。それでも良いから、若くて可愛い女性に声を掛けてもらいたい。紋別なんて嫌いだ・・・。
 ちなみに、テトラポットの慰霊碑は、公園の頂上ではなく中腹にある。「オホーツクに消ゆ」のイメージをそのまま持ってこない様に気をつけて欲しい。
 電車の車両を使った簡易宿泊所がある道の駅"おこっぺ"。公園もあり、なかなか綺麗な場所である。既に店が閉まっている時刻だったので、その車両が見たくて立ち寄っただけだった。

 暗くなる前に少しでも距離を縮めようと、時速80km/hを極力維持する。何処かで夕食を買うか食うかしなければならないのだが、立ち寄って食べられる場所は期待できない。18時半、流石に疲れて道の駅"マリーンアイランド岡島"で休憩。一服した後ウンコしていたら、やはりウンコ狙いのお子様が入ってきた。唯一の洋式は私が占拠しており、和式の使い方が分からず嘆くお子様。早めに切り上げてあげたが、あの子は兄の指導を受けながら和式を使ったのか?それとも私の使用後の臭い空間に堪えたのか?相手が子供なだけに、素直に「臭い」と言われても傷つくだけなので、残り61kmの道のりを再び走り出した。

 道の駅"マリーンアイランド岡島"を出てすぐに、街の灯りが見えた。枝幸町である。これが食事を摂る最後のチャンスかもしれないと思い、市街地へと入る。北海道で良く見かけるコンビニ"セイコーマート"。イトーヨーカドーっぽいマークだが、これは良いのだろうか?ここでは通常のコンビニ弁当以外に、出来立てもある。朝食とサラダに加え、出来立てのカツ丼を購入。空腹だったので、すぐに食べた。コンビニを出たのが19時半。この一帯でかなり休んでしまったので、残り59kmを一気に走り抜けるとしよう。
 コンビニによるチャンスは、もう一度あった。クッチャロ湖付近の町、浜頓別町である。さらに書くと、道の駅"さるふつ公園"から車で2,3分ほど行った先にも、24時間営業のセイコーマートがある。

 20時半、遂に道の駅"さるふつ公園"に到着。さるふつ温泉に入れる時刻だが、今日はもう良い。真っ暗な道の駅と相反して、道路向こうの駐車場はかなり明るい。そこに座り込み、キーボードを叩いて旅の記録を書く。なんとも変な光景だろう。かなり長いこと外にいたのに蚊に刺されなかったが、北海道には蚊がいないのだろうか?道の駅側へと戻り、あえてトイレの近くに車を停め、歯を磨いて眠りに就いた。

 この日の走行距離は436km。累計で1,282kmである。

夏の北海道ドライブ その2

 2008年8月11日、昨晩寝付けなかった割には6時半に目が覚めたので、6時50分にはホテルを発った。改めて釧路湿原を見ようと細岡展望台へと向かう。7時半に着き、日中の釧路湿原を楽しみにしていたが、あまり感激しなかった。昨日薄暗い見たのと大差がない。さらに、こういう光景に慣れてしまったのかもしれない。やはりノロッコ号に乗るべきだった。
 かなりお腹が空いていたのも理由の一つかもしれない。サルボ展望台とか、もうどうでも良く、空腹を満たすため釧路市街へと戻り和商市場へと向かった。

 新鮮な魚介類が集まる和商市場。ここでは朝8時から勝手丼という物が食べられる。惣菜屋で御飯(酢飯)を買い、あとは市場で好きな具を買って乗せて行くだけ。普通なら複数の店を渡り歩くのかもしれないが、私は面倒なので一つの店で留めた。ウニ、イクラ、大トロ、ホタテ、サーモン、イカ、これだけ乗せて2,070円(御飯、味噌汁含む)。一切れ380円の大トロを2切れ乗せたのが効いている。
 先月の秋田に続き今月も新鮮な魚介類を食べてしまい、流石に両親に申し訳ないので、ウニを一箱送ってやった。私の旅は私自身の為にあるので、基本的に土産という発想は持ち合わせていないのだが、この北海道の空気が私の心を広くしているのかもしれない。

 根室までの道のりは遠く、運転も退屈になってきたので、道の駅"厚岸グルメパーク"で一休みした。厚岸大橋を挟んで厚岸湖と厚岸湾が見える。素敵な景色だ。
 ここの名物は炙り焼きらしいが、流石に食後間もないので何も口にせず退散した。

 根室までの道中、何度か睡魔に襲われた。休もうと決めると駐車場が見当たらないのは哀しい事だが、根室市に突入して間もなく駐車場を発見したので、10分ほど目を休めた。
  根室市街から20kmの場所にある納沙布(ノサップ)岬。そんな最果ての地でも人々は生活している。北方領土を取り戻そうと戦う人々。尊敬に値する逞しさである。
 12時10分、空が曇っているせいで、最果て感がさらに際立っていた。哀愁の漂う土地、ここに来る観光客は、何を背負って帰るのだろう。
 オホーツク・ラーメンとやらを食べて帰ろうと思ったが、道の駅"スワン44ねむろ"のエスカロップが気になっていたので食べずに退散。
 トドワラ、そして開陽台へ行くことを考えると、時間的にも心配だったので、結局"スワン44ねむろ"にも寄らずに先へと急いだ。

 野付半島が見えてくるにつれ、空が明るくなってきた。"木の墓場"トドワラに行こうというのに、曇天では雰囲気が増してしまうではないか。
 野付半島に入ってから15km程でトドワラに着く。14時40分、そこで見た光景は私の予想を大きく覆した。そこに待っていたのは、綺麗な建物の野付半島ネイチャーセンター。「オホーツクに消ゆ」で見た光景とは大きく違う。それもそのはず、ここから原生花の咲く遊歩道を30分ほど歩かなければ、"木の墓場"と例えられた場所には辿り着けないのだ。
 咲くものは咲き、枯れるものは枯れる。誰が手を出すわけでもなく、自然と種族が移り変わる世界。そんな世界を素晴らしく感じたいところだが、開陽台の事を考えるとそうもいかず、片方壊れたサンダルで来たことを後悔しながら、急ぎ足で歩く。
 ようやく着いたそこには、枯れ果てた木々が立っていた。まさに"木の墓場"。こんなところで自殺しようとした野村真紀子は、なんとも迷惑な女である。せめて車でアクセスできるところにすれば良かったものの。
  海へ向かって木の橋が掛けられている中、途中に一箇所だけ"トド橋"という石橋があった。何故そこだけ石なのかは分からなかったが、とりあえず渡り、オホーツク海の水に触れ、そそくさと駐車場へと戻った。
 野付半島ネイチャーセンターへと戻る途中、中学生くらいの娘と両親らしき人たちが歩いてきた。娘のスカートは膝丈ぐらい。それでも、トドワラ先端の風力にかかれば怪しいものである。そんな期待を胸に引き返そうか、開陽台へと急ぐべきか悩んだが、そこで引き返せる程の勇気(?)はなく、15時40分、トドワラを後にした。
 ナラワラに立ち寄った後、野付半島をさらに北上していると、雲の合間から光が差し込んでいた。私が何よりも好きな光景。今回お世話になっているマーチをセットに写真を撮り、開陽台へと向かった。
 地球の丸さが視認できるという360度パノラマ展望台を持つ開陽台。言うだけあって素晴らしい光景だ。ただ残念なのは、野付半島ではあんなに良い天気だったのに、内陸へ進むにつれて雲に覆われてしまって事だ。それでも充分な展望は得られる。しかし、これが晴れなら時刻的に日没も拝めただろう。暗くなるのを待って星を眺めるのも良い。それらが約束されるなら、是非とも再び訪れたい場所だった。

 開陽台へと向かう途中で見かけた中標津にあるファミリーレストラン「ビッグパパ」で夕食を摂った。牛乳ラーメンを食べたかったのだが、この食事は本日最後の食事。今日の疲れを癒すため、明日の朝まで保たすため、結局ハンバーグを選んでしまった。味に五月蝿い人間ではないので良く分からないけど、まぁ普通かと。
 マクドで無線LANが使えないかと、東武サウスヒルズへと向かった。会員登録が必要だった事を知らなかった私は当然無線LANを使えず、モールの中だけに煙草も吸えない。しかし、ウォッシュレット付きの綺麗なトイレ、明るい場所でコーヒーを飲みながらPCの使用。昨日の釧路グランドホテルより快適である。

 羅臼へと向かう途中、いくつかの町を通った。まだ20時前後にも関わらず、街は眠りに就こうとしていた。北海道に限った事ではなく田舎なら普通なのだが、「夜になれば街も人も寝る」という当たり前の事に感動できる。人が眠らないから街が眠らない。ならば、街を眠らせる事で人も眠らせて頂きたいものである。

 20時50分、道の駅"知床・らうす"に到着。知床半島で車中泊など、実は不安でいっぱいだったが、そこは観光地にしてこの時期。駐車場には多くの車が停まり、車中泊と思われる方々がゴロゴロ居た。トイレで歯を磨けば他に出来る事はない。明日に備えてただ寝るだけだ。
 そう思ったが、一向に寝付けない。知らない土地で初めての車中泊、それだけ緊張しているということか。体の力を抜き心を無にして寝ようと試みるが、雑念が邪魔をする。この自慰を出来ない環境なだけに、余計に興奮する。iPhoneでダラダラと遊び、多分0時過ぎぐらいに寝たのだろう。

 この日の走行距離は476km。累計で846kmである。

夏の北海道ドライブ その1

 2008年8月10日、5時1分鴨宮発の東海道線で羽田空港へ向かう。飛行機の出発時刻は7時55分なのだが、航空券の受け取りが羽田空港なうえ、出発の30分前までに受け取らないといけないので、致し方あるまい。羽田-帯広の往復で57,900円、この時期にこの値段で入手できるのなら、悪い値段ではないだろう。
 6時半には羽田空港に着く。航空券を受け取りチェックインをしようとするが、機械が受け付けてくれない。どうやら私の便は満席らしく、非常口付近の席を用意してくれた。窓側で景色が見れるし、長い脚が伸ばせて快適である。
 そんな景色を楽しもうともせず、席に着き次第すぐに眠りについた。目を覚ますと、そこは滑走路。そんなに寝たつもりはないが、帯広空港に着いてしまったようだ。と思うのは浅はかで、混雑のため出発が20分ほど遅れているだけだった。
 9時45分、とかち帯広空港に到着。送迎車が来ていることも知らず、迷いながらもマツダレンタカーへと向かう。迷うほどの場所でもないのだが、空港を出ただけでは、どのレンタカー会社も目につかないので、歩くべき方向が分からないのだ。

 10時半にマツダレンタカーを発つ。何処を見てもとにかく広い。これが北海道か。信号も無く車も少ない為、自然とスピードが出てしまう。スピード違反で捕まったら台無しなので、私の制限速度は80km/hに決めた。
 基本的に走行速度が速い中、70km/h以下で走られると堪えられない。オンネトーまでの長い道のり、こんな調子では日が暮れてしまうので、池田から足寄まで道東道を使った。自動車道でも油断してはいけない。警察に捕まっている車を1台見かけた。それから先もしばしば見かけたので、この旅行、一時たりとも気は抜けない。
 道の駅"あしょろ銀河ホール21"で休憩を取ろうとしたが、ちょうど曲がるT字路のところにあるもんだから逃してしまった。
  休まず走り続け12時半、オンネトーに到着した。透き通った水の美しい湖。天候や見る角度によって色が変わるらしい。一番綺麗な状態を知らないので満足できたが、阿寒富士が雲に隠れて見えなかったのは残念だ。
 駐車場から写真を撮っていたが、畔からも撮ろうと歩を進める。不安定な木の上を歩いていたら、バランスを崩して足が落ちてしまった。サンダルと半ズボンだったので被害は無いに等しいが、足が汚れたのがショックだ。
  13時過ぎ、アイヌコタンに到着。阿寒湖沿いの街全体がアイヌな感じなのかと思っていたが、実際はこのアイヌコタンの一角のみで残念。他のエリアは普通の観光街だった。
 アイヌコタンでムックリという楽器が気になった店のおばちゃんが実演してくれるものの、実際に演ってみなければ楽しさは分からない。しかし、「これは私のだ」と言って試させてくれなかった。たかが600円の話だが、挑戦する気が失せたので買わずに店を去った。
 洗面所で足を洗い、足湯に浸かる。まだ疲れているわけでもないので、すぐに上がってボッケを見に向かった。砂浜の中でグツグツと煮立っている泥火山。だからと言って、迫力のあるものではないので、期待はしないで頂きたい。
 特に毬藻に興味は示さず、14時半に阿寒湖を発った。
  屈斜路湖までの道中、道の駅”摩周温泉”を発見したので、立ち寄った。かなり質素な場所ではあるが、周囲の景色は綺麗なもので、休憩するには悪くない。

 15時40分、和琴に到着し、屈斜路湖半に出る。まだ中学生になりたての私が、「オホーツクに消ゆ」というゲームで刺激的を受けた和琴温泉。ここでは写真を撮るよりも、中山めぐみのバスタオルを取りたい。当然そんなゲーム上のキャラクターがいるわけもなく、実物のクッシーも目撃できず、20分ほど散歩して立ち去った。
  和琴から15kmほどのところにある美幌峠。高い場所から屈斜路湖を眺められるのだから、それなりに期待していた。が、そこに広がる光景は、期待を遥かに超えたものだった。天気に恵まれたのか、このまま飛び降りても悔いがないほど美しい。峠の先端に向かう途中、サンダルが片方壊れてショックだったが、それも許せるほど美しい。
 道の駅"ぐるっとパノラマ美幌峠"で食べた"あげいも"も、これまた美味い。アメリカンドッグの皮でジャガイモを包んだだけの様な気がするが、絶妙な組み合わせだった。
 17時20分、摩周湖第一展望台に到着。"神秘の湖"と名乗るだけあり、確かに幻想的だ。何時間観ていても飽きなそうだが、こちとら時間が押している。そろそろ疲れてきてはいたが、20分程で立ち去った。

 釧路湿原を観ようとサルボ展望台に寄ろうとしたが、時間的に薄暗くて登れるのか否か分からなかった。シラルトロ沼は道路沿いから観れたので良いが、塘路湖が堪能できなかったのが惜しい。
 急ぎ足で細岡展望台に向かう。19時前には着いたものの、日は落ち空は雲で覆われ、真っ暗ではないものの、本来の景観の10%も堪能していないだろう。

 このまま根室へと向かうか?釧路に宿を取って、日の当たる釧路湿原を観るか?残り5日という期間に、どれだけの余裕があるか分からない。しかし、次にいつ来るかなど分からないので、急遽釧路市内で宿を取った。それが釧路グランドホテル。

 シングル1泊4,050円。シャワーが浴びれて、睡眠が取れて、のんびり計画の調整が出来れば良い。と思っていたが、かなり名前に似つかわしくない古ぼけたホテルだった。冷房と呼べるものは見当たらないは、ドライヤーも無いわ、近くて一番安いところを選んだつもりだったが、これなら数百円出してもっと良いホテルに泊まれば良かった。
 あって無いような計画の再調整を済ませ、翌日に備えて眠りに就こうとするが寝付けず、記憶では2時過ぎまで起きていたのは確実。翌日は4時半に起きて行動開始する予定だったが、諦めるとしよう。

 この日の走行距離は370kmだった。