2010年7月10日、朝4時には起きたいところだったが、寝るのが遅かった事もあり目覚めたのは5時過ぎ。朝食を摂って支度をし、5時30分頃には出発できた。
湿気は感じるものの空気はとても澄んでいて、砂山と化した富士山がハッキリと見える。この天気のお陰でテンションは一気にハイ。箱根の山々もハッキリに見えるが、その山の先には雲が待っていた。
高度が上がれば気温は下がる。早朝の箱根をバイクで走るのに、半袖,半ズボン,サンダルという装備は夏でも足りなかった。そもそもこんな軽装備でツーリングに出掛ける事が間違っているのかもしれないが。
芦ノ湖上部に滞留している雲に突入すると、寒いわ視界は悪いわ。道の駅でホットコーヒーを飲んでいる間も、見えているのは白い世界。ここから三島方面へ下りる際も真っ白。眼鏡は曇り裸眼の方が走り易かった。視力0.1以下&乱視で走るのは相当恐いのだが・・・。
国道1号を下っていると、左手にホテル箱根路が現れた。見るからに廃墟だったので寄り道。敷地内には気軽に入れるのだが、各個室のドアを開けてまで散策する気は起きなかった。一室だけ完全に炎上していたが、いったいこのホテルで何があったのだろうか。
三島から国道136号を南下、韮山で県道134号に移り西へ向かうと、とある交差点の角に珍妙な木が見えた。豆塚神社という場所で、その思い切った刈り込み具合が気になったので軽く寄り道をした。
そのまま県道134号を走り、狩野川を渡った先の交差点も直進すれば、スポーツワールド伊豆長岡に辿り着く。近所の体育館と清掃センターは廃墟ではないので、間違えないように。
敷地のガードは非情にユルいので、気楽に入って中を散策。広さ、廃れ具合、見所の多さ、もはやここだけ見て帰っても良いほどの規模である。
ここの目玉はウォータースライドを備えたプールだろうか。敷地の最も奥にあり、草木を押し分けて進むか、いつ抜けるか分からないプールの底板の上を歩くしかない。
気軽に楽しめる廃墟として、ここは是非お薦めしたいところだ。但し、廃墟は自然に廃れてナンボなので、イタズラなどはしない様に。
海岸線に出て、モッコリした淡島を眺めつつ南下。この淡島もいずれ訪れたい場所なのだが、ロープウェイ,犬の散歩サービス,お中道散策が無い現状、まるで魅力を感じない。
そのまま県道17号を海沿いに走っていると、沼津市民の森への表示板が見えた。河内を通り金冠山/戸田峠へ抜ける予定だったので、県道から左折。達磨山を経由する戸田峠から土肥峠への道のりは、広々とした草原の尾根道なので気持ちよかったが、風があったのでバイクにはちと寒かった。
この道中、県道から外れた場所に一軒の建物が見えた。平和寺というらしいが、建物的には寺ではない。敷地の入口に仏像が置いてあるものの、建物に近づくほど仏教的な要素はまるで感じない。
しかしここは廃墟ではなく、現在でも活動を続けているので、余計な事はしない様に。第二次世界大戦の犠牲者を供養する為の仏教系施設らしいので、興味本位だけで立ち寄った自分に反省である。
土肥峠から土肥方面へと下る。国道136号に出ると"土肥金山8km"の案内板が見えた。私の目指しているのは金山廃坑なのだが、土肥という地域は廃坑すら観光施設として活用しているのだろうか。
看板に従い土肥金山を目指していたら、予め調べていた場所を通りすぎ街中に出てしまった。それもその筈、土肥金山は完全に観光施設である。私が目指していたのは"清越金山"だった。
おおよその場所はチェックしていたのだが、正確な場所は分からない。廃墟=人目のつかない場所という意識があった為、周辺の林道をひた走る。かなり荒れ果てた林道に時間を費やしたが、これはハズレ。国道136号"うつぎの3号橋" 等から下を眺めると、赤いトタン屋根が密集している場所があるので、そこが清越金山跡である。さらに言うと、国道136号沿いに椎茸の傘をした観音様が居るので、その脇の道を上がっていけば良い。
しかし、着いたところで厳重なバリケード。宿舎らしき建物は裏から回るしかないのか。右奥の建物は、下の土建屋の脇を上がるしかないのか。スポーツワールド伊豆長岡で靴擦れが出来てしまった為あまり無理は出来ず、頭上に見えた建物だけは強引に押し入った。こういう場所って、やっぱ何人かでワイワイ来るものだよな。
かなり余計な時間を費やしてしまったが、予定を続行。中伊豆を走る県道414号まで抜け、湯ヶ島から再び西へ。県道59号がT字路に突き当たると、それっぽい看板が正面に構えていた。バイクを降りて少し登ると、そこには水の流れ出す廃坑が。しかし周りに金山跡らしい建物がない。
丁度そこに地元の老人が居たので聞いてみると、この廃坑の上部にあるのは確からしい。なのでダイレクトに登っていくか、ぐるりと回ってくるか。ここで体力を消耗したくないので、民家のある方から回っていくと、そこには一軒の廃屋があった。天城湯ヶ島金山である。
県道59号を西へ進み続けると、錆び付いた巨大なプラントが姿を現す。中外鉱業の持越工場である。人気は無いものの、微妙に新しめの建物が交ざっていて、生きているのか死んでいるのか分からない。
中外鉱業の組織図を見ると持越工場が含まれているので、週末だから人がいないだけなのだろう。ともあれ、ここは魅力的な建物が多過ぎる。
仁科峠を越えて宮ヶ原を抜けると、"大滝ランド"の幟が道沿いに並んでいた。廃屋は封鎖されているものの、土地的には釣り堀として営業しているらしく、実に分かり易かった。
厳重なバリケード。そして中には一匹の犬。放し飼いか分からないが、とにかく無理は禁物だ。だから退散。この先にある大滝だが、伊豆七滝の一つらしい。検索すると河津七滝しか出てこないので残りの六滝が不明だが、伊豆の滝巡りというのも良いかもしれない。
国道136号に出て駿河湾沿いを南下。かなり時間が押していたので、休憩は軽く一度しただけで、ひたすら石廊崎を目指した。
目標としていた廃ドライブイン"ことぶ(き)"。きがカッコで囲われているのは、看板が抜けていて不明だからだ。どちらかと言うと、このすぐ近くにある石廊崎ジャングルパークの方が見所が多いのではないだろうか。
時間も無いし、靴擦れは痛いしで、外見だけ見て早々に退散。
そのまま下田から国道135号に乗って、相模湾沿いを北上。目の保養を期待した白浜海岸だが、時期尚早なのか時間が遅かったのか、残念な感じだった。
伊豆大川のコンビニで一服。そう言えばこの辺に次の目標物である"N大学セミナーハウス"がある筈である。国道135号から伊豆大川駅方面へ登り、旧道っぽい道を北上。それっぽい建物は見つけたがバリケードあり。私の興味は既に次へ移っていたので、すんなり諦めた。
国道と並行して走っているような道路なのに、車の通りは少ない。野猿の群れが平然と道路に居たのには驚きだ。しかし、この道沿いにアレが現れる。"幻の橋"と呼ばれるアレが。
左手の頭上に現れた赤い橋。"赤沢ループ橋"である。確かに南下していたら気づかないかもしれない。
道路沿いの入口は完全に封鎖されているものの、その先には先人達が侵入したと思われる空間があった。ここから少し登り、草木をかいくぐって左手に前進あるのみ。高さを間違えたからといって、その場で上下を試みようとはしない事だ。足場がモロいのでとても危険である、と経験者は語っておこう。
土まみれ傷だらけになって、ようやく橋の下端に取り付いた。ここからグルリと橋の上を歩ける。そして終端は見たままに落ちている。
実に貴重な物件で、来た甲斐があった。明るい内に来れて幸いである。間違っても夜に来るのは避けよう。ライトがあればどうにかなるレベルではない。
後はひたすら帰るのみ。自宅に着いたのは18時40分頃だったか。私の計画が悪いのか、ツーリングの後はいつもクタクタである。
こうして一通り見た感じ、スポーツワールド伊豆長岡と赤沢ループ橋が、侵入する事に罪悪感が薄くかつスケールも大きいので、私的にはお薦めである。