2008年5月17日土曜日

金時山ぐるり

 2008年5月17日、朝7時に家を出て、自転車で小田原駅へと向かう。20分程の距離なのだが、このハイキングを充実させる為、自転車を使った。
 7時36分の大雄山線で、終点の大雄山へ向かう。所有時間は22分。小田原〜緑町とか岩原〜塚原とか、何度乗ってもその距離の短さに疑問を抱かせられる。
 8時10分のバスで地蔵堂へと向かう。乗っているのは老人ばかり。これで良いのか?私の生活。今こんな事をしていたら、老後の楽しみが無くなってしまうではないか。
 矢倉沢と地蔵堂。乗客達はこれらハイキングの主要停留所にしか用が無く、20分程で地蔵堂に着いた。

 少し歩くと大きな岩が見えてきた。金太郎が遊んだという太鼓石と兜石だ。しかし私は、太鼓石に気を取られ、兜石の存在には気づかなかった。
 地蔵堂から15分程で夕日の滝に着く。滝を見るなど生涯2度目かもしれないので、その程度は量れないが、かなり癒してくれた。こんな滝が、こんな身近にあるとは思いもしていなかった。

 8時50分、コースに戻り金時山へと向かう。所有時間は130分。ここからは完全に山道だ。この記録上では、ここをスタート地点としよう。
 鳥が囀り、せせらぎが聞こえる。木漏れ日も美しい。富士山は岩だらけだし、石垣山は舗装されているし、ようやっと山道らしい山道を歩けた。
  10分ほど登ると、休憩所が見えてきた。トイレはない。まさかここで一休みはするまいて。しかし、このペースで休憩所があるならば、なかなか快適ではないか。
 そんな期待は甘かった。そこから先に休憩所らしい場所は見当たらない。途中で足柄峠・金時山コースと金太郎コースに分岐していたので、金太郎コースを進んだ。足柄峠・金時山コースは、一気に山頂へ登って、山頂沿いに歩いて金時山に向かうコースらしい。互いのコースは途中で合流するのだが、私はジワジワと山道を登る金太郎コースを選んだ。
 続く、続く、ひたすら登りが続く。川沿いを歩いた時は、いまいち行く先が分からなかった。これといって休憩に適した場所もなく、座り心地の良さそうな大きな石も無い。休むキッカケが掴めず登り続けたが、スタート地点から40分程で、木の根に腰を据えることにした。長袖のうえ、パーカーまで持ってきてしまったが、半袖で良いほど汗だくだ。

 スタート地点から60分。遂に木々に囲まれた世界を抜けた。周りの山々もほぼ同じ高さに見える。ゴールは意外と近いのか?と思ったが、眼前にはさらに高い山が見えた。あれが金時山か・・・。もう脚はガタガタだ。
 ここでは妙に大きな羽音に危険を感じ、休まず先に進んだ。すると、3分程で猪鼻砦跡に出た。下には小山町が見えて素晴らしい景色だ。しかし、残念な事に富士山は雲に覆われていた。職場からも見ている富士山だが、こういう時に見たかったものだ。
  猪鼻砦跡で、カロリーメイトを一本補給し、一服して出発。金時山の高さを見るだけでゲンナリする。
 傾斜は急で、もはや一歩進むのも辛い。道中に鉄階段があるのだが、これは味わいを奪って残念だと思ったが、この鉄階段が意外と良い目標物になった。全12個ある階段は、それぞれに番号がふられている。それだけでは意味が無いのだが、階段ごとに干支の名前が付けられているので、12個登れば頂上だと思わせてくれた。されど12個・・・
 その急な傾斜に正直嫌になったのだが、ふと後ろを振り向くと緑豊かな山々が見えた。そうだ、私はこういうのを見に来たのだ。これ以上を見る為に、もう一踏ん張り頑張ろう。
 12個の階段を登りきると、「山頂まであと5分」との表示があった。これは誰を対象にした”5分”なのか?疲弊した私には、もはやネガティブな受け止め方しか出来ない。一歩進んでは立ち止まり、また一歩進んでは立ち止まり、実際に何分かかったかは知らないが、ようやく金時山を制した。
  時刻は10時30分。スタート地点から100分かけての登頂だ。悪くはないだろう。
 山頂には人が老若男女大勢いた。土曜日にしては空いている方なのか?気分を害さぬ程度の人数だ。
 富士山はやはり見えない。ガスがかかっているのか、下界も若干白けている。とはいえ悪くない景色だ。方角が分からなかったので、自分で何処を見ているのか分からなかった。近いだけあって御殿場アウトレットも見下ろせるらしい。
 山小屋でアイスを買って喉を潤す。煙草は猪鼻砦跡で吸ったし、携帯灰皿もいっぱいなので、15分の休憩の後、早くも山頂を後にした。

 地蔵堂からの登山道に比べ、仙石原からの登山道は短い。それ故に、仙石原からの登山客を軟弱者だと内心馬鹿にしていたが、こちらはこちらでかなり険しい。ポピュラーな登り道かとは思うが、それに比例して歩き易くなっているわけではなかった。

 途中で道が分岐していたので、金時神社方面を選ぶ。金時神社というと小山町の方が本家かもしれないので、箱根側は神社に書いてある通り”公時神社”と記述しよう。
 下りなんて楽である。休まずドンドン突き進む。見える景色が箱根なだけに、高低差もあまりなく、地元民の私にはどうでも良い。
 そうして下りること45分。公時神社に到着し、私のハイキングは終了した。時刻は11時30分。
  公時神社には、大きな鉞や土俵らしきものがあり、なるほど金太郎といった感じだ。ここでした事は、トイレに寄ったぐらい。

 金時神社入口のバス停から仙石原までバスを使おうとしたが、本数が少ないので歩いた。それほど遠くはない。国道沿いを歩いているうえに、同級生が住んでいるような場所でもあるので、もはや楽しむ物は何も無い。

 10分ほど歩いて仙石原の交差点に着いた。バス停が見当たらないので、とりあえず芦ノ湖方面に向かって歩いた。すると、桃源台行きのバスが私を抜かしていった。「箱根でバスを一本乗り過ごすのは得策ではない」そう思いバスを追おうとした瞬間、石段に躓いた。転びはしなかったものの、右脚の脹脛がつり、私はその場に屈み込んだ。休まず下ってきたツケが、一気に襲ってきたのだ。気をつけるべきは、山道より公道という事か。

 仙石案内所前のバス停で、脚を休めながらバスを待つ。幸い10分毎にバスが出ているらしい。バスに乗ると雨が降り出してきた。下山中に雲が気になっていたが、よもや雨が降るとは。

 桃源台に着いた頃には、かなり小雨になっていた。軽く芦ノ湖を見て、早速ロープウェイに乗る。桃源台から終点の早雲山まで、片道1,330円。
 まだ空いている時間帯なのか。ロープウェイはこまめに来るので、すんなり乗れた。姥子から大涌谷にかけては、それなりの高さを進む。高所恐怖症ではないが、それ以前にチキンなので、少しドキドキだ。
 腐った卵の臭いがする大涌谷。とはいえ独特の景色は、ロープウェイで素通りするには勿体ない。大涌谷でロープウェイを乗り換えなければならなかったので、駅の中とはいえ、大涌谷に降り立つ事が出来た。もうこれだけで満足だ。
 あとは早雲山に向かうのみ。今までと比べ、ダントツに高い場所を進んでいる。それはまだ良いとして、その先のロープが、やけに急な角度で下に向かっているではないか。ジェットーコースター嫌いな私に、あの角度はかなりの恐怖を感じさせた。
 とはいえ、ロープウェイがその角度に傾くわけではない。私はかなり安心した。「これから一気に落ちますよ」的な光景を目にすると生きた心地がしないので、私はジェットコースターが大嫌いなのだ。
  早雲山には特に用が無い。駅構内にプラレールが飾ってあったので、それを見て満足できた。
 ケーブルカーに乗り換え、強羅へと下る。ひたすら傾斜に沿って進むだけあり、車体そのものが斜めになっている。これはこれで面白い。

 強羅に着いたら、目指すは彫刻の森。一駅なので電車に乗るのも馬鹿らしいし、雨も雨と呼ぶ程ではないので歩いた。歩いて10分程の距離である。

 彫刻の森に着くと、雨は止んだ。徒歩の時にはひどい雨に出くわさず、幸いだ。

 彫刻の森内の物については、口では語れまい。そこにあるのは芸術だからだ。私如きが一つ一つ感想を書いたところで、陳腐な単語が連なるだけで無駄なだけである。ただ一言、「疲れていない脚でもう一度のんびり来たい場所である」とだけ書いておこう。
 アートとは関係ないのが、温泉足湯「ほっとふっと」。これがあるから、ハイキングで疲れても来たと言える。園内にある無料の浴場で、靴を脱いで脹脛あたりまで脚を浸けるだけであるのだが、これがまた悪くない。実際に浸かっても温泉の効能とか良く分からない人間だが、気持ちだけでも充分に回復した。
 帰り際、何気に土産屋を見ると、私の好きなサルバドール・ダリの作品が立体化していた。一体8,000円はするが、これらはかなり欲しい。それ以外にも、魅力的な物がたくさんあった。部屋にまとめて飾りたい。それにはまず、これらのアートを殺さないように、部屋のテーマを変えなければ駄目だ。物欲だけで購入するには惜しい代物なので、今日のところは我慢した。
 彫刻の森にいた時間は50分程。これでは、かなり物足りない。それほど魅力のある場所だ。

 彫刻の森から箱根登山鉄道に乗って箱根湯本へ。スイッチバックである。この傾斜を下るには必要かつ、観光者には珍しいものなので良いのだが、毎日通勤や通学で使う人間には焦れったいだけなのだろう。
 箱根湯本から小田急にのり小田原へ。15時53分に小田原駅に着いた。約9時間の旅はこれにて終わった。

 と書きたいが、私には最後の修羅場が待っていた。16時から英会話のレッスンを入れていたのである。これでも全体的に早めに行動したつもりだが、結局致命的な時刻になってしまった。
 もう限界に近い脚で自転車を漕ぐ。急いで漕ぐものの、やはり長くは続かない。行きに自宅から20分かかったのだ。ほぼ同距離を何分で行けるというのだ。
 16時15分、スクールに到着。少しは早く着いたのか?生徒が私だけだったらしく、講師は地味な作業を与えられ退屈だったらしい。
 講師は既に金時山を体験していただけでなく、明神ヶ岳も攻めていた。それどころか、バスや電車ではなく自転車で行ったという事で、私よりも格段と上手だ。私よりイギリス人が堪能しているとはどういう事だ。
 地元の人間ほど、地元の楽しみ方を知らないものだと、改めて思い知らされた。

0 件のコメント:

コメントを投稿