2010年2月20日土曜日

河津を歩く

 2010年2月20日、5時50分に家を出て、6時14分の電車に乗り込んだ。三島駅で7時11分の駿豆線に乗り換え。生涯2度目の駿豆線だが、地元の大雄山線と同じく伊豆箱根鉄道なので、車両は全く同じだった。興味が失せたので、修善寺までは車窓からの景色を楽しまず睡眠を摂った。7時45分に修善寺駅に到着し、8時15分発河津駅行きの東海バスを待った。車窓からの景色を楽しみながら進むこと約40分、水生地下のバス停にて下車。遠くない筈の中伊豆なのに、3時間もかかった事に驚きだ。

 今回歩いた道は踊子歩道と呼ばれるもの。浄蓮の滝から河津七滝まで続く旧道の事らしいが、実際は湯ヶ野バス停まで続いている。河津町観光協会では水生地下を起終点としていたので、その通りに歩いたのだが、キチンとスタート地点を知っていれば、浄蓮の滝から歩きたかった。
  まだ雪の残る踊子歩道。下に見える沢が雪で一層引き立っており実に美しかった。そんな雪景色の中を30分ほど歩くと、旧天城隧道に到着。若者には心霊スポットとして有名な場所だが、歳を取ったものには観光名所である。
 全長445.5mに渡る石積みのトンネル。中には微弱ながら灯りが点っている。街灯の無い暗い山道を車で走り、着いた先にこんなトンネルがあれば、そりゃ恐いだろう。しかし昼では味のある隧道。どちらを味わうかは、好み次第だ。
  旧天城隧道を抜け15分ほど歩くと寒天橋に着く。八丁池に行く場合は、ここから登れるそうだ。その寒天橋のすぐ先に、二階滝という滝がある。大きな滝ではあるが、遠目に、しかも見下ろす事しか出来ないのが残念だ。

  二階滝から歩くこと30分。国道414号を渡り、山道に突入。すると直ぐに赤い橋が見えた。橋の手前で分岐となっており、左へ行くと平滑の滝が見れる。高さは無いが、幅があって素敵な滝だ。分岐から少し歩いて右手の階段を下りるのだが、私は階段に気づかず直進してしまった。道ではなくなっているような、そうではないような。私を引き返させたのは、単に道が完全に途切れたからだ。

 そこから先は特筆するほどのものはないが、石仏やら横穴やらあり、それなりに退屈はしない。そんな最中、私のテンションを急激に上げた物が現れた。
  廃車である。草木の浸食した車を何度か見かけたが、今度のは車の損傷っぷりも激しく、実に興奮させられた。廃車の場所から数分でトイレのある休憩所に到着。この近くには廃れた自販機が。もはや今日のメインが河津桜である事を忘れるほど幸せだった。
  そこから10分程で、右手に猿田淵への分岐がある。前回河津七滝を観に来た時に、間違えて行ってしまった道だ。この道を進むと、河津七滝を見れないまま出合滝付近まで歩く事になるので、気をつけよう。
  カニ滝の手前で、"みかぽん"なる不思議なキャラクターの看板があった。そのユルさに惹かれていたら、どうやら飲食店への入り口らしい。その店の名は"肉月"。だいぶ前からお腹が空いており、かつ汁粉に惹かれて店に入ってみた。

  囲炉裏のある古い建物で、雰囲気が実に良い。そんな場所で汁粉一杯なのも惜しいので、豚焼肉膳を注文した。トーストやケーキもあるのだが、純和風な建物だけに初回は和食でいきたい。

  七輪を出してくれるので、焼き物は自分で焼く。久々に食べた和食なので、味の程は何とも言えない。和食の上品というか質素というか、大人しい味付けを評価するほど、私の舌は肥えていないのだ。汁粉は小豆を煮ており、薄めの味である。なんかこう、大人の料理を楽しんだ気分だ。


 他の店は行った事がないので味は分からないが、とにかく雰囲気だけは飛び抜けているので、河津七滝へ行った時は"肉月"へ立ち寄ってみて欲しい。
  出合滝と大滝を観て、河津七滝観光は完了。この辺からようやく河津桜が目に入る。しかし既に、花半分緑半分といった状態だった。
  13時頃、ループ橋を見上げながら歩き、湯ヶ野を目指す。国道からは反れた道を歩くのだが、たまに河津桜が咲いていたりして退屈はしない。「退屈はしない」と書いたが、特に何もないので保証はできない。

  途中で尿意を覚えどうしようかと思ったが、吊り橋を渡ってすぐに"川合野ふれあいの森"という場所に出た。地域住民や観光客の為に用意されたこの広場。トイレや水道があり休むには良いのだが、かなり利用者が少ない事を悟れるほど廃れていた。しかし、そんな場所に救われたのが、私の膀胱である。


 そこから10分少々で、小鍋神社に到着。かつて源頼朝と文覚上人が源氏再興の話をした場所らしい。まだ天城隧道も無い時代に、随分なところまで流れてしまった頼朝である。
  ここまで来れば終点は近く、国民宿舎かわづまで10分程で着いた。国民宿舎と言うだけに、源泉掛け流しなのに入浴のみ500円と安い。リネンは100円で普通のタオルと歯磨きセットが買える。若干不便なのが、大浴場と露天風呂が離れている事だ。両方入るなら、一度上がらなければならない。ならば選ぶは露天風呂である。露天風呂にはシャンプーや石鹸が用意されていない事は、受付で教えてくれた。バスの時刻まで余裕もないので、風呂に浸かれれば良い。
 そうして行った露天風呂。最初に出た言葉は「小っちゃ!」だった。とはいえ他に客はおらず、脚は余裕で伸ばせるし、独占するには丁度良い大きさと言える。
 源泉掛け流しにしてはヌルいのかもしれないが、私には充分熱く、短時間勝負の今日には丁度良かった。

 国民宿舎かわづを出て、再び踊子歩道。すると、そこには無料の足湯があった。これでも良かった様な...と思ったが、足湯だけでは後々「湯ヶ野温泉に入った事がある」と語れないので、私の選択は正しかったのだろう。
 湯ヶ野バス停に到着し、踊子歩道は終了。14時43分のバスに乗り、いよいよ河津桜の本番である。

 上峰のバス停で下車し、河津川沿いを歩いて桜を堪能した。この辺だと上流なだけに、まだ人も少なく実に観易い。
 とにかく続く桜並木。土手には菜の花が咲いている場所もあり、実に綺麗である。しかし、桜並木は100mだろうが1kmだろうが、そこにあるのは桜である。下流に行くにつれ混雑していき、写真も撮り飽きたので、桜の似合う綺麗な女性をターゲットに探しながら前進し続けた。しかし、そこまでの女性は見当たらず、まぁ居たら居たで上手く写真が撮れるかも疑問だが、完全に桜がどうでも良くなった。
 人通りの少ない道を歩き、もはや帰る事だけを考えて電車の時刻を調べる。15時49分に乗ろうと駅に行くと、かなりの人が待っていた。ホームが狭いだけに余計である。これはたまらんと、電車が着いた途端、私の後ろに並んでいた中年男性が順序を守らず前進した。扉が開くと同時に強引に席を取りに行く。ベビーカーを押している女性が前にいるのに、関係なしである。それなりに遠くから来ているのだろうが、これが大の大人のやる事か。若者の団体客も中年の団体客も、騒がしくてマナーがなっていないのは同じである。

 その割に座席の競争率は高くなく、私も伊豆高原を過ぎたところで座ることが出来た。熱海着が17時13分。鴨宮に到着したのが17時41分。今までで一番伊豆を遠く感じた日だった。

0 件のコメント:

コメントを投稿